パパ半育休からの時短なう

育児休業を取りながら働く半育休の話を中心に、育休の制度や子育てについてつらつらと。

専業主婦家庭の夫も、育児休業は取れるという話

こんにちは。橋本です。

先日、こんなニュースがありました。

 

wezz-y.com

 

産休育休を連続で6年取っているNHKのアナウンサーの方に、「仕事してないのにそんなに長い期間受信料から給与が払われるってどうなの?」みたいな批判があり、話題になりました。

 

この批判はベースが間違っていて、産休は健康保険、育休は雇用保険から給付金が支払われるので、「いや、給与じゃないっすよ」で終わりな話。

しかしTwitterなどではこの批判に同調する人もいたらしく、そうか、産休育休中は給与は支払われないということを知らない人もまだまだ多いのか・・・と思いました。

 

 

 こういう、「育休を取った当事者にとっては普通なんだけど、そうでない人には勘違いされている」ことって、けっこうあると思うんですよね。

今回はそんなことのひとつ(じゃないかと僕が思ってる)、「専業主婦家庭の夫も育児休業は取れるよ」ということを紹介したいと思います。

 

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育児・介護休業法上での、専業主婦家庭の夫の育休

 育児・介護休業法の法律条文を見るとこんな感じに書いてあります。

 

第五条 労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。

(以下略)

 

 契約社員など、期間を定めて雇用される労働者については、育休復帰後も継続雇用の予定があることなど、多少の条件があるのですが、それ以外の条件は特にありません。

 男性であろうが女性であろうが関係なく育児休業は取れますし、男性の場合、配偶者が働いていようが専業主婦であろうが関係なく育児休業は取れます。

 

なお、同法では、「会社の労使協定で育休取得の除外条件をつけることができる」ということも定められていて、昔は会社ごとに、「専業主婦家庭の夫は労使協定で育休取得不可とする」ことができました。

しかし、平成21年の法改正で、その制限をもうけることが禁じられました。

 

(3)労使協定による専業主婦(夫)取得除外規定の廃止

○ 労使協定を定めることにより、配偶者が専業主婦(夫)である場合等、常態として子を養育することができる労働者からの育児休業取得の申出を事業主が拒むことを可能としている制度を廃止する。

  

参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要

 

ということで、結論としては、現状、育児・介護休業法では、専業主婦家庭の夫の育休取得を妨げるものはなにもないということになります。

 

育児休業給付金の給付における、専業主婦家庭の夫

会社を休業することはできても、育児休業給付金がもらえないとなればとても困りますが、そういうこともありません。

 

育児休業給付金を受ける条件は、ざっくり言うと以下のとおり。

 

雇用保険に加入している

・それなりの期間勤務している

 

雇用保険はわかりやすいと思いますが、期間については、かなり大雑把にまとめると、その会社で働いて1年以上経っていればOKという感じです。*1

 

ここでも、男女差はないし、配偶者の就労状況も関係ありません。

 ですので、専業主婦家庭の夫が育休を取って、育児休業給付金を受け取ることも全く問題ない、と言えます。

そもそも妻が専業主婦なのに夫が育休とる必要あるの?という意見に対して

 制度上は全く問題ないということは説明しましたが、そもそも、「妻が働いてないんだから育児は任せればいいじゃん、なんで夫が育休取る必要があるの?」と思う方もいるかもしれません。

 

そういう方にはぜひ「産後うつ」とか「産褥期」とかでググって10個くらい記事を読んでいただきたいですが、とにかく、産後は

 

・出産という大イベントでそもそも女性は体力がものすごく下がっている

・しかし家族が増え、家事タスクも大幅に増えてやることが多くなる

・さらに母体におけるホルモンバランスが出産を機に大きく変化するので情緒面でリスクが高まる

 

と、たいへんづくめで、妻1人で家のことをやるなんて無理ゲーです。

 

そういった問題を解決するために里帰り出産という手段があったわけですが、実家が遠かったり、二人目出産だったりすればハードルが上がりますし、そもそも里帰りしてもせいぜい1〜2ヶ月で戻ってくるわけで、その後待っているのはやっぱり無理ゲーモードだった・・・というケースも少なくないでしょう。

 

そこで、夫が育児の立ち上がりの時期に育休を取って妻をサポートするというのが大事になってくるわけです。

 

・・・というか、ここまで書いた産後の大変さって、専業主婦でもワーキングマザーでも変わりませんよね。(共働きでも、妻は育休中なわけですから)

共働き家庭だろうが専業主婦家庭だろうが関係なく、夫が育休を取ることは家族のために非常に重要なことなのです。

喉元過ぎれば熱さを忘れる、ではいけない

最初にも書きましたが、こういった話って育休を取った当事者は「そうだよね、知ってる」というケースが多いと思います。

 

しかしこれから子どもを授かり、子育てしていこうとする夫婦が、専業主婦とサラリーマン、という世帯だったりすると、夫が育休を取るなんて発想が、そもそもどこからも出てこない可能性もあります。(ちなみに僕の前職も、男性比率が多く、ほとんどの方が奥さんは専業主婦で、男性が育休、なんて発想がある人は周りにはほぼいませんでした)

そんな人たちが、知らずに出産・育児に突入して無理ゲー状態になるのはやっぱりよくない。

 

経験者・当事者が、なんらかのかたちで、「育休の給付金は給与じゃないから後ろ指さされる理由はない」「専業主婦家庭のパパだって育休は取れる」みたいなことを、繰り返し繰り返し伝えていくことが大事なのではないかと思います。

 

SNSでも、会社の会話でも、ぜひ積極的に話題にしていきましょう。

ではでは。

 

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*1:もう少し正確に言うと、育休開始時点からさかのぼった2年間で、月の半分以上出勤している月が12ヶ月以上であれば受給条件を満たす、という感じです。詳細はこちら。

ハローワークインターネットサービス - 雇用継続給付

2017年に読んだ本のまとめ

2017年は102冊の本を読みました。

年間100冊を目標にしているので、どうにか達成という感じです。(読みゃあいいってわけじゃないんですけどね)

年末なので、読んだ本のうち印象的だったものを振り返ってみようと思います。

 

■産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ

 

子どもが欲しいが何らかの理由で産むことができない育ての親が、乳児院などの施設や、あるいは産んでも育てられないという女性から赤ちゃんを受け取り、法律上も親子となる特別養子縁組。

 

その特別養子縁組で子どもを授かり、育てているいくつかのご夫婦のエピソードと、実際に制度を使って子どもを受け入れるにはどうしたらいいかがまとめられている本。

 

エピソードで実際に縁組をした人がどんな気持ち、環境で子育てをしているのかということを伝えつつ、かっちりした制度の説明も入っていて、「養子を受け入れる」ことを考えている人のファーストステップとしてとてもよいと思いました。

 

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)

 

 

この本についてはブログにも書いてます。

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■ママたちが非常事態!?: 最新科学で読み解くニッポンの子育て

 

なぜ人間という種に産後うつというリスクがあるのか、なぜイヤイヤ期があるのかなどといった内容を、人間の生理の仕組みや文化人類学的なアプローチで解説する本。

 

もともと人間は、親子(特に母子)一対一で子育てをするのではなく、群れの中で複数の親が複数の子を育てあう協同養育というスタイルで子育てしてきたため、産後は特に他人とのつながりを本能的に求め、それが不安を呼び起こし、現代では産後うつのリスクになる、みたいな話でとてもおもしろい話。

 

やっぱり社会で子どもを育てるのって大切だなと感じる本。

 

 



■「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

 

因果関係と相関関係って違うよ、エビデンスの信頼度はこんなふうに度合いがあるよ、というのをやさしく解説している本。

 

まじで因果関係と相関関係の違いは中学生くらいで教わるべきだと思う。まさに情報リテラシーの基礎。特にSNSで不特定多数の発信者の情報に触れるにあたってはちゃんと理解しておくべき。

 

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

 

 

 

■サピエンス全史(上)

 

話題になってましたねー。僕は上巻しか読んでないですが(笑)

 

種としての進化の速度を、人間の認知能力向上のスピードが超えてしまって、現代の社会ができた、という話に得心がいきまくり、なるほどーーーーーとなりました。

 

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

 

■青白く輝く月を見たか?

 

森博嗣のWシリーズ、今年も最高でした。

 

近未来、人工的に作られた人間(ウォーカロン、Walk Alone)が普通になり、人間も人工細胞を取り入れることでほとんど不老不死に。しかし、人間には新たに子どもが生まれないようになっていた・・・という社会で、科学者の主人公があれこれするんですが、とにかく、人間とは何か?生きているということとは何か?を考えさせられる作品。

 

 

 

シリーズはこちらから始まっているので、読むならここからがいいと思います。

 

 

彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)
 

 

 

■OPTION B(オプションB) 逆境、レジリエンス、そして喜び

 

自分的今年のベスト。

 

不慮の事故(病気)によって夫を亡くしたシェリル・サンドバーグフェイスブックCOO)が、喪失の悲しみからどのように立ち直っていったかを振り返る本。

 

第三者の視点から見て、家族や、あるいはペットなど、大切な存在を亡くして悲しんでいる人に対して、どのように接するべきなのか?というのは難しい問題だと思いますが、「その話題に触れない」ことが、逆に本人を傷つける場合もあるというのは、たしかにそうだなと。そういった意味で、人のレジリエンス(回復する力)に寄り添うという観点でも、学びが多い本でした。

 

何より、サンドバーグ本人の深い悲しみと、そこからどうにか立ち直っていこうとする気持ちが強く感じられてとても感銘を受けました。

 

多くの人に読んでほしいな、と思った本。

 

 

OPTION B(オプションB) 逆境、レジリエンス、そして喜び

OPTION B(オプションB) 逆境、レジリエンス、そして喜び

 

 

 

銀河英雄伝説

 

会社の読書部の課題図書(?)として、全10巻を読破。傑作でした。

 

最悪の民主政治と、最良の専制政治、どちらが望ましいのか?という大きなテーマを背景に繰り広げられる、魅力的なキャラクターの群像劇。戦略と戦術の応酬。非常にエキサイティングで面白かったです。

 

てか、これ今から800年くらい未来を舞台にしてるんですが、そこまでの人類の発展や、未来年表の中で起こった事件や争い、政変をひとりで考えて作り上げるという、作者田中芳樹先生の想像力・構想力に脱帽・・・

 

 

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

 

 

 

 

■お金2.0 新しい経済のルールと生き方

 

これまで社会のトッププライオリティであった「お金をたくさん稼ぐ」ことの価値が相対的に下がってきていることは、特にソーシャルセクターにいると実感しますが、そういった社会と価値観の変化を体系的にまとめた本。

 

特に、FacebookGoogleなどのIT企業は、これまでの企業価値測定のツールである財務諸表ではその価値を読み取ることはできず、旧来の考え方だと株価がバブルみたいにも見えるけれど、実際の価値は財務諸表にあらわされないユーザやデータにあるよね、という話は非常に象徴的でした。

 

ソーシャルセクターがこれから取り組んでいく社会的インパクト評価もまさにそういった流れの中にあるなと。

 

 

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

 

 



来年もたくさん本を読んでいきたいと思います。がんばろー。

 

ちなみに読んだ本はこちらにまとまってます。

yoshichihaのバインダー - メディアマーカー

 

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「こういう職業・職種の人って育休取れるの?」という疑問への回答

こんにちは。橋本です。

 

男性にもどんどん広がってほしい育児休業

育休を取りました!というパパ社員のインタビューなんかも、ウェブでよく目にするようになってきました。

 

でも、そういうインタビューって、ほとんどがいわゆる会社勤めのサラリーマン。
医者とか弁護士が育休を取りました、という事例って全然見たことがありません。

っていうか、そもそもそういう職種って育休を取れるのでしょうか

 

という疑問を持つ方も多いと思うので、改めて調べてみました。

 

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育児休業給付金の給付を受ける大前提は、雇用保険加入

そもそも「育休を取る」ことの定義も多少あいまいではあるのですが、まずはシンプルに、会社を休んでその分の収入を育児休業給付金で補う、というパターンで考えてみましょう。

この場合、「育児休業給付金を受給できるかどうか」というのが観点になります。

 

結論から言うと、

 

雇用保険に加入している
・それなりの期間勤務している

 

という条件がそろえば、給付金は受給できます。

 

(1)雇用保険に加入している

そもそも育児休業給付金は、雇用保険から給付されます。なので、その加入が前提条件です。

なにかしらの法人などに勤務している、つまり雇用されているのであれば、雇用保険加入は必須なので、条件を満たすでしょう。

 

さすがに「自分が雇用保険に入っているかわからない」という方はほぼいないと思いますが、加入していれば、給与明細から雇用保険料が控除されているはずです。(給与明細をもらっている、という時点でほぼ間違いないと思いますが)

 

逆に言うと、事務所勤めをしていても個人事業主として会社と契約しているという場合は(たとえば、完全歩合制の営業とかでしょうか)、雇用契約とならず、雇用保険にも加入していないということもあるでしょう。

その場合はフリーランスの方のように、育児休業給付金の給付は受けられないということになります。

 

(2)それなりの期間勤務している

ざっくり言うと、育休開始時点からさかのぼった2年間で、月の半分以上出勤している月が12ヶ月以上であれば受給条件を満たします。

 

正確な情報としてはハローワークのページを見ていただきたいですが、コピペで引用(すみません)しますと、こんな感じです。

 

休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数11日以上ある完全月(過去に基本手当の受給資格や高年齢受給資格の決定を受けたことがある方については、その後のものに限ります。)が12か月以上あれば、受給資格の確認を受けることができます。

 

ということで、普通に週5日で働いているのであれば、1年以上勤務していれば条件を満たすと思います。

契約社員、有期雇用の場合はまた別です。こちらをご覧ください。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h28_11_01.pdf


職種と育児休業給付金

ということで、基本的に育児休業給付金の給付に「職種」は関係ない、と言えると思います。

例えば医者も、病院に勤める、つまり雇用契約を結んでいるのであれば、雇用保険に加入しているでしょうから、給付金を受給できます。

 

いっぽうで開業医の場合、経営者と同じように被雇用者ではありませんから、雇用保険には入らず、給付金の対象にもなりません。

大学の先生や学者も、同じように、大学に勤務して雇用保険に加入、という方が多いのではないでしょうか。

 

弁護士についても、何らかの会社に雇用されているのであれば、同じになりますが、たぶん、個人事業主として働いている方も多いでしょう*1。そういった方は給付金の対象外です。(とっくの昔に認識していると思いますが)

 

ちなみに、公務員は雇用保険に加入していないので、他の職種のように雇用保険からの育児休業給付金は受給できませんが、公務員のための育児休業の法律が別にあり、ほぼ同じような収入の補填を受けることが可能です。


育児休業給付金が受けられないと育休は取れないのか?

給付金は雇用保険に入っていないと受給できないので、そもそも個人事業主や経営者の場合対象になりえません。

 

とはいっても、育休を取る=育児休業給付金を受給する、というわけではもちろんありません。業務量をうまく調整することで、個人事業主や経営者の方でも育児休暇を取る、あるいは生活の中での育児の比率を大幅に高める(半育休的な勤務&育児)、ということは可能です。

 

例えば僕が勤めているフローレンス代表の駒崎は、経営者ですが子どもが生まれたタイミングで2ヶ月の育児休暇を取りました。といっても業務量をゼロにするのではなく、在宅でどうしても対応が必要な仕事は行う、という感じです。

また他にも、サイボウズの青野慶久社長、経営者以外で言うと放送作家鈴木おさむさんなども育休を取っています。

最近ではメルカリの小泉社長が育休取得予定というのがニュースになっていたりしました。

 

もちろん簡単なことではありませんが、実践している人は少なからずおり、おそらく今後少しずつ増えていくのではないでしょうか。

 

まとめ

ちょっと長くなったのでまとめるとこんな感じです。

 

(1)育児休業で給付金を受ける条件は雇用保険加入+一定期間の勤務実績

(2)職種そのものと育休取得の可否は直接は関係ない

(3)経営者や個人事業主は給付金は出ないが、うまくやりくりして育休を取っている人もいる

 

「よくわかんないけど、そもそも自分の仕事って育休取れるのかな?」という方がいれば(たぶん、男性には少なからずいるのではないかと思っています)、参考にしてみてくださいませ。

 

ちなみに、(3)については、ひとことで個人事業主といっても収入などは幅もあると思いますし、フリーランスでも雇用保険育児休業のように、ある程度収入を補填できる仕組みがあるとよいのだろうなとは思います。

政府の副業推進などと近い分野だと思うので、これから制度ができていくといいですね。

 

ではでは。

 

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*1:弁護士に限らず、「こういう職種の場合個人事業主として働いているケースが多いよ」というのがあれば、Twitter等で教えていただけると幸いです。

「男も育児するなんて当たり前」でありつつも、「イクメン」を叫ぶ理由

こんにちは。橋本です。

 

先日、ブロガーで作家のちきりんさんがこんなツイートをしていました。

 

 

 

「男性の家庭進出が大事だ、男性ももっと家事育児をやろう、イクメンになろう」という意見に対して、

 

「本来、女性だけでなく男性も育児するというのは当たり前のことなんだから、イクメンなんて言うのはおかしい」

「それぞれのカップル間で納得できる家庭運営をすればいいのであって、男性が/女性がこうするべきなんていう風潮はおかしい」

 

という反対意見ってけっこう多いのですが、今回はこれに反論*1してみたいと思います。

 

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その1:「男性が家事育児するのは当たり前。イクメンなんていらない」

まずはこちらの意見。

最初に言っておくと、男性が家事育児するのは当たり前、というのはその通りだと思います。僕もそう思っています。

イクメンを増やすのは大事ですが、イクメンだから偉いかというと、別にそうではなく、「妻にイクメン認定されてようやく対等」くらいではないでしょうか。

 

でもだからといって、「当たり前のことだから、言わなくてよい」で終わるかというとそうではない。

というかそもそも、男性が家事育児するのが当たり前、と思っている人がほとんどかというと、そういうわけでもありません

 

世論調査で経年データがとられている、性別役割分業についての意識についての調査を見てみます。

 

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内閣府男女共同参画社会に関する世論調査より筆者作成

 

「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考えに対して、赤が賛成、青が反対というグラフです。

ここ二十数年でじわじわと反対多数になってきてはいるものの、まだ40%近くの人が男女の性別役割分業に賛成しています。

 

「いやいや、そうは言っても若い世代はそういう風に思ってないでしょ」と、思うかもしれませんが、年代別データはこちら。

 

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子育て世代真っ只中の30-40代は若干「反対」の割合が大きいですが、顕著というほどではなく、残念ながらあまり世代差がないということがわかります。

 

イクメン、なんて言うけど、そもそも男性が家事育児するのは当たり前だよ」という意見は正論なのですが、そういう方はそもそも、上のグラフでいう性別役割分業反対派にあたります。

 

イクメンムーブメントが目指すところは、全体の4割を占める性別役割分業賛成派、「男性が家事育児なんてするもんじゃない」という考えの人に「いやいや、男性が家庭参画するのカッコいいですよ!」とアピールすることなのです。

 

というわけで「男性が家事育児するのは当たり前。イクメンなんていらない」という意見に対しての回答は

 

「いえ、まだそれが当たり前じゃない人もいっぱいいるので、そういう人に変化を促そうとしているのです」

 

になります。

 

その2:「それぞれのカップルで納得のいく役割分担ができればそれでいい。周りがどうこう言うことはない」

 

次はこちら。そもそも世論とか人々の意見とか関係なくて、それぞれのカップルで話し合って決めればいいじゃん、という意見です。

 

こちらもまず言っておくと、意見自体は正論です。

僕も、イクメンムーブメントはまだまだ必要だと思いますが、例えば友人夫妻に「ねえねえ、ちゃんと家事の分担してる?平等にやってる?夫が家事育児しないとかマジありえないよ」なんて、言いません。

 

最終的には、それぞれの家庭のことはそれぞれで決めればいいでしょう。

 

でも、社会に対して「みんな、自分のアタマで考えよう、以上!」と言えばいいかというとそうではない。

なぜなら、そもそも今の日本の社会には、女性が社会に出づらいバイアスがあるからです。

 

たとえば賃金格差。

こちら、日経新聞の記事からの引用ですが、2016年時点で、女性の男性に対する賃金比率は約73%。けっこう差があります。

 

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出典:女性の賃金、16年は男性の73% 格差解消なお遠く :日本経済新聞

 

性差で賃金差・収入差が生まれやすいということは、夫婦の役割を考えたときに「夫のほうが稼げるから家のことをやるより仕事に集中したほうがよい」となりやすいということ。(あくまで平均するとではありますが)

 

そして、この賃金格差ともかなり関連しますが、このブログのメインテーマでもある育児休業の取得率も、男女の差はとんでもなく大きいです。

 

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f:id:ysck_hashimoto:20171011124713p:plain出典:平成 28 年度雇用均等基本調査

 

取得率は、女性が80%強に対して、男性はたったの3%です。

上の図だとよくよく数字をみないとわからないかもしれませんが、同じグラフにまとめるとこうです。

 

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なかなかすごくないですか、この男性陣の低空飛行っぷり。

 

男性の育休取得率が低いというのは、男性が家事育児に参画しづらい社会であるということのあらわれです。

 

こういった環境では、夫婦で家庭運営を考えるにも、妻がキャリアを重視するという選択肢を取ることのハードルが高すぎます。

むしろ夫婦どちらも同じくらい仕事に力を入れて家庭のこともやって・・・というやり方ですら、けっこうな努力が必要になるでしょう。

 

ちなみに、子どもが生まれる前は男女平等かというと、そういうわけでもありません。たとえば、新卒採用の総合職における男女割合はこんな感じ。マイナビニュースからの引用です。

 

f:id:ysck_hashimoto:20171011124825p:plain出典:総合職採用者の女性比率は22%、採用倍率は43倍に - 厚労省公表 | マイナビニュース

 

子育て・家族運営というフェーズに突入する以前に、相応のジェンダーギャップが存在するわけです。

 

イクメン(や、ここではイクボスも非常に重要)ムーブメントがこの問題に対してもたらす価値は、女性が働きづらいバイアスを是正するということです。

 

働くという観点で社会の主たるプレイヤーである企業がイクメン・イクボスムーブメントを取り入れ、企業運営に影響を及ぼしていけば、長時間労働の是正、男性の育休取得率のアップなどによって、男性の家庭参画が進み、その分女性が取れる選択肢が増えていきます。

 

特にイクメン・イクボスの場合、「男性の側から」の動きだというのも重要です。

それ自体がジェンダーギャップのひとつですが、多くの企業では意思決定者に占める男性の割合が多いというのが現状。政府も叫んでいる「女性活躍推進」のための会議の出席者がほとんど男性、なんてギャグみたいな光景も珍しくないでしょう。

 

そんな状況で女性の側にフォーカスして働きやすさを高めようとしてもうまくいくはずありません。そうではなく、男性が自分たち男性に目線を向けて、イクメン・イクボスを増やそう!という方向性で施策を打てば、言い逃れのしづらい環境になります。そして男性の家庭進出が進めば、玉突き的に女性がビジネスのキャリアを積めるようになるわけです。

もちろんそれだけで男女の賃金格差などが一気に縮むということはないかもしれませんが、長期的にはこういった様々な指標における男女のギャップが解消されていく一助になるでしょう。

 

ということで、「それぞれのカップルで納得のいく役割分担ができればそれでいい。周りがどうこう言うことはない」という意見に対しての回答は

 

「そもそも社会環境において女性が社会で活躍しづらい状況なので、普通に考えるとバイアスがかかる。イクメン・イクボスムーブメントはその環境を変えるために意味があるんです」

 

となります。

 

さいごに:イクメンムーブメントは「ハンドルを逆に切ること」

他にも「イクメン批判」のロジックはあるかもしれませんが、とりあえず思いついたところで反論を書いておきました。

 

そもそもイクメンを批判する方の多くは、自身がちゃんと考えて、カップル間でそれなりにバランスのとれた家庭運営をされているのだと思います。

そういった方々から見れば、イクメンムーブメントに価値はないというのはまあそうでしょう。

 

ただやっぱり、日本全体を見ると、いたるところにジェンダーギャップはあります。そのギャップを埋めるためにあえて「当たり前である」イクメンをフィーチャーして盛り上げているわけです。

 

作家の森博嗣さんがエッセイで言っていた表現なのですが、男女平等を自動車でまっすぐ走ることに例えると、これまでは、ハンドルをずっと「男性優位」のほうに切った状態でした。

 

じゃあまっすぐ走るようにハンドルをニュートラルな状態に戻すことが平等を実現する方法かというとそうではなくて、すでにかなり、もとの道からずれた方向に走っているのを、是正しなければいけない。なら、ハンドルを逆側に切らなければいけない。そのあらわれが、レディースデーやらなんやら、「逆に」女性を優遇する仕組みなのだと。

 

イクメンムーブメントもそういうことなんだろうなというのが僕の考えです。

あまりにも「男性は仕事!家庭など顧みない!」という方向に切っていたハンドルを、逆に切る。一見すると「それじゃまっすぐじゃないじゃん」という感じなのだけど、本当に走るべき道にはまだまだ戻っていない、と。

 

いずれ元の道に戻って、ハンドルを本当にニュートラルにしてよいときが来るでしょう。そのときには「イクメン」はきっと死語になっているはず。そういう日が早く来れば良い、と思っているという点では、僕もイクメンが嫌いな人と同じ思いです。

 

ではでは。

 

 

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*1:ちきりんさん自身は上記のツイートの前に「イクメンが増えることはいいことだけど」という前置きもしているので、「なにがなんでもイクメンはダメ」という考え方ではないと思います。ちきりんさんを批判するのではなく「意見に反論する」というのがこのエントリの意図です。引用が多くなるのを避けるために上記2つのツイートだけ貼りましたが、ぜひちきりんさんの前後のツイートもご覧になってください。

育児休業給付金には上限金額が。制限を受ける人はどれくらい?

こんにちは。半育休からの時短勤務なうな橋本です。

 

育児休業取得時に雇用保険から出る育児休業給付金。

ざっくり言うと、「育休前の額面月額給与平均の3分の2あるいは2分の1」というのがその金額なのですが、それにあてはまらないケースもあります。

 

具体的には、月給がある一定以上の金額となる場合、給付金に制限がかかるのです。

 

今回はその例について。給付金の金額上限にひっかかるのはどういうときか?そして日本で働く人のうちどれくらいがその制限を受けるのか?という話です。

 

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育児休業給付金には上限金額がある

たとえば高給取りの方で、月額100万円の給与を得ていたとして、給付金がその3分の2で67万円になるかというと、そうはなりません。

 

育休前6ヶ月の額面月額給与平均*1447,300円*2を超える場合は、その金額が447,300円である、とみなして計算されるのです。

 

その場合、給付金の月額は

 

子どもが生まれてから半年:299,691円

子どもが生まれてから半年以降:223,650円

 

となります。

 

仮に月の給与が100万円だとしても、給付金は最大で上記のとおり約30万円となる、ということです。

 

育児休業給付金の上限にひっかかる人ってどのくらい?

とはいったものの、実際に給料をもらって働いている人で、この制限にかかる人は、必ずしも多くはありません。

 

国税庁の「民間給与実態統計調査」をもとに、平成27年(2015年)の、日本の給与所得者の年収金額帯と人数をグラフにしてみると、こんな感じです。

 

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国税庁の資料(http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2015/pdf/000.pdf)より作成

 

給付金の制限がかかり始める、額面月給447,300円は、年収にすると530万円ほど。

そうすると、少なくとも、上のグラフで、年収500万のラインまでは、制限なしということになります。

 

年収が500万以下の人数を合計すると、全体の70%強。ここまでは、ほぼ確実に、上限にはひっかかりません。

 

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さらに、このグラフは賞与も含んだ年収の金額です。

 

育児休業給付金のもとになる賃金日額は、賞与は除外して計算するので、賞与を含めて年収が530万を超えても、給付金の上限にはかからないケースが多いと思われます。

 

だいたい15〜20%が賞与であることを考慮すると、実質的には年収500〜600万の層も制限にかからない可能性が高く、そうすると全体の80%程度は、特に制限を気にしなくてOK、ということになります。

 

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というわけで、ざっくりではありますが、給与所得者の80%くらいまでは、育児休業給付金の上限にはひっかからない、と言えるのではないでしょうか。

 

さいごに

ただし、一点注意はあって、このグラフは男女含めたもの。

 

男性のほうが女性より給与所得額の平均は高くなりますから、「男性の育休」という視点で男性だけ抽出して考えると、男性の中で給付金の金額制限を受ける人は、全体で見たときよりは割合として多くなってくると思います。

 

それでも、それなりに給与所得が高い人に限られはしますが・・・

 

ちなみにそういえば、政府は副業推進しようとしていますが、こういった雇用保険周りはどうなるんでしょうね。手続きやらなんやらあんまりめんどくさい感じにならないといいのですが。

 

ではでは。

 

以下参考です。

 

■実際に育児休業給付金ってどれくらいの金額なの?ということが気になる方はこちらもどうぞ。

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*1:育休前6ヶ月の額面月額給与を平均したものを「賃金月額」といい、育児休業給付金の計算の基準となります。

*2:

この金額は毎年8月1日に更新されるようです。2017年7月までは上限金額は424,500円でしたが、変更になったもようです。最新の情報はハローワークのページをご確認くださいませ。

ハローワークインターネットサービス - 雇用継続給付

半育休だと普通の育休に比べて収入がどれくらい上がるのか

こんにちは。橋本です。

 

以前、育休中のメイン収入源である育児休業給付金がどれくらいの金額になるかというエントリを書きました。

 

ysck-hashimoto.hateblo.jp

 

今回は、この内容にプラスして、半育休(育休を取りながら働く)だったら収入はどうなるか?というのを、具体例も出しながら説明したいと思います。

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半育休中の収入内訳

半育休では、育児休業を取得して育児休業給付金(以下、給付金)を受け取りつつ、通常より短い時間働いて、その分の給与も得る、というスタイルになります。

 

給付金は、育休前6ヶ月の額面給与を平均したものを基準にして、それを67%(2/3)とか50%(1/2)に割り引いた金額が給付されます。

割引率が67%か50%かは、育休が始まってからの期間によります。育休開始後半年までは67%で、半年以降は50%になります。

 

給与は、詳細は会社ごとに異なるかと思いますが、働いた時間に応じた金額が支給されるケースが多いでしょう。

 

給付金プラス給与ということで、場合によっては普通に働いているときよりも収入が増えたりするんじゃないか?と思うかもしれませんが、さすがにそういうことはなく、

 

・給付金がもらえる条件は、働く時間が「月80時間まで」

・給付金+給与の金額合計が育休前額面給与の80%を超えないように給付金が調整される

 

という仕組みになっています。

 

具体的な例で半育休の場合の収入を見てみる

 

イメージがわきやすいよう、具体的な例で説明します。

 

(1)育児休業給付金の金額

例えば、2017年1月から育休に入ったとして、その前6ヶ月の給与収入がこんな感じだったとします。

 

表1:育休前の収入

額面金額 手取り金額
2016年7月 340,000 270,000
2016年8月 350,000 280,000
2016年9月 335,000 265,000
2016年10月 355,000 285,000
2016年11月 330,000 265,000
2016年12月 345,000 280,000
平均 342,500 274,167

 

 

額面金額は給与金額+各種手当を足したもの、手取り金額はそこから税金など控除金額を差し引いたものです。内訳のイメージとしてはこんな感じです。

 

あとで育休中の控除はどうなるかも関係してくるので、なんとなくでいいのでイメージしていただければ。

 

表2:収入内訳

項目 金額 合計
基本給 300,000 340,000
(①額面金額)
残業代 10,000
住宅手当 20,000
通勤手当
(※定期代を按分、など)
10,000
健康保険料 15,000 70,000
(③控除金額)
厚生年金保険料 28,000
雇用保険 1,000
所得税 6,000
住民税 20,000
③手取り給与(① - ②) 270,000


さて、表1のような給与の場合の給付金の金額はこうなります(細かい計算は割愛)。
 

表3:給付金の金額

育児休業給付金金額
育休開始後半年以内(67%) 229,461
育休開始後半年以降(50%) 171,240

(2)給与の収入をプラスする

そして、この育休期間中に会社で働いて、その給与が仮に15時間働いて40,000円だったとしましょう。

 

そうすると、収入は給付金+給与でこうなります。

 

表4:給付金+40,000円の給与収入

育児休業給付金金額 給与収入 合計
育休開始後半年以内(67%) 229,461 40,000 269,461
育休開始後半年以降(50%) 171,240 40,000 211,240

 

半育休だと、社会保険料と健康保険料、所得税が免除されるので、ここから差し引かれるのは住民税と雇用保険のみ*1。仮に合計で20,000円とすると、手取りはこんな感じです。

 

表5:控除後の手取り収入

給付金+給与収入合計 控除金額 手取り収入
269,461 20,000 249,461
211,240 20,000 191,240

 

ちなみにこの手取り金額を、育休前の手取り金額平均(表1を参照)と比較してみるとこんな感じ。

 

表6:手取り収入の比較

手取り収入 育休前手取り収入平均 割合
育休開始後半年以内(67%) 249,461 274,167 91%
育休開始後半年以降(50%) 191,240 274,167 70%

 

まああくまでサンプルの給与明細なので、ざっくりイメージではありますが、

 

半育休の収入を育休前と手取りベースで比べると、それほど下がらない(はず)

 

ということはわかるかと思います。

 

育児休業給付金に調整がかかる場合

 

次は給付金に調整がかかるケース。給付金+給与収入が、育休前の額面給与の80%を超える場合です。

 

たとえば、育休期間内に会社で働き、その給与が仮に、30時間働いて70,000円だったとしましょう。

 

この金額を給付金と合計するとこうなります。説明をわかりやすくするため、上段の、育休開始後半年以内のほう(給付金の率が67%)を例にします。

 

表7:給付金+70,000円の給与収入

育児休業給付金 給与収入 合計
229,461 70,000 299,461

 

まあまあの金額になりますが、前述した給付金+給与収入の金額上限を見てみるとこうなります。

 

表8:育児休業給付金の上限金額つき

育児休業給付金 給与収入 合計 上限金額
(育休前額面平均の80%)
229,461 70,000 299,461 273,984

 

この上限金額は、育休前額面平均金額の80%。

 

給付金+給与収入の金額が上限金額を超えているので、給付金と給与収入の合計が上限金額と等しくなるよう、給付金に調整が入ります。

 

表9:給付金+70,000円の給与収入(給付金に調整)

育児休業給付金
(調整後)
給与収入 合計 上限金額
(育休前額面平均の80%)
203,984 70,000 273,984 273,984

 

というわけで、単純に、給付金がもらえる上限80時間のMAXまで働いて給与をもらっても、そのぶん収入が上がるわけではないわけです。

 

最初の例と同様、住民税・雇用保険の控除金額を20,000円として手取りの金額を見るとこんな感じです。

 

表10:控除後の手取り収入

育児休業給付金
(調整後)
給与収入 控除金額 手取り収入
203,984 70,000 20,000 253,984

 

そしてこれを育休前の手取り収入と比較してみるとこんな感じになります。

 

表11:手取り収入の比較

育児休業給付金
(調整後)
育休前
手取り収入平均
割合
253,984 274,167 93%

 

あくまでサンプルデータではありますが、半育休である程度給与収入があると、育休前に比べて収入はそれほど下がらない、というのがわかるかと思います。

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半育休の注意点

これまで見たとおり、半育休で育休中も仕事をすると、収入の面では、だいぶダウンの幅を抑えられます。

ただし、注意点もあります。僕が重要だと思うのは以下の3点。

 

(1)育休開始直後から毎月支給されるわけではない

しかし、家計管理の面では注意が必要です。給付金は通常、2ヶ月に一回の支給*2。しかも初回の支給は育休開始から2ヶ月後なので、育休開始直後に限って見れば、収入は間違いなく下がります。

 

言うまでもなく、子どもが生まれるといろいろと出費もかさむので、育休が始まる前からある程度蓄えを持っておいたほうがよいでしょう。

 

(2)半育休で働く時間を都合よく増やせるとは限らない

現状の育児休業の制度だと、育休中の就労はある程度限定的な条件でのみOKとされています。具体的には、突発的な業務や、属人的でどうしても当人が対応しなければならないものなど。

 

なので、業務によっては、そもそも育休中に仕事をするのが難しい、となる場合もあります。会社としっかり話し合っておく必要があるでしょう。

 

(3)半育休もあくまで育児がメイン!

最後に一番重要な点は、半育休も育児休業中であり、あくまでメインは家事・育児だということです。

 

せっかく育休をとって子どもとパートナーに寄り添う機会なのに、収入を気にして仕事にばかり気を取られていては本末転倒。

何に重きを置くか、しっかり考えて、育休を意味のあるものにすることが大事だと思います。

 

さいごに

 

だいぶ長くなってしまいましたが、僕個人としては、もっともっと男性の育休が普及して欲しいと思っています。

 

しかし育休中の収入ってどうなるの?というのはなかなかイメージがわきづらいもの。収入面の不安で育休を取る決断をなかなかできない、という人もいるでしょう。

この記事がそういった人の不安を払拭する材料になれば何よりです。

 

ではでは!

 

■そもそも半育休って何?という方はこちらもどうぞ

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*1:住民税は前年度の所得をもとに金額が決まりますが、育児休業給付金はその際の所得から控除されるので、翌年度の住民税がだいぶ下がります。

*2:申請を毎月行えば、1ヶ月ごとで支給されるらしいのですが、その申請を行うのは人事担当なので、実現したければ調整が必要です。2ヶ月に1回では厳しい、ということであれば相談してみるのがよいと思います。

キャリアの「裁定取引」とNPOへの転職

こんにちは。橋本です。

 

毎晩、7ヶ月の息子にミルクを飲ませて寝かしつけしているのですが、部屋を暗くしているので、スマホを見ていると目が疲れる。そこで、iPhoneのNight Shiftという、ディスプレイの色味を目に優しくする機能を使っています。

 

先日何気なく、そのことをツイートしたんです。

 

 

 

そしたら我らがボス駒崎氏がこれをリツイートしまして。

 

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おや、と思いました。わざわざリツイートするということは、もしかするとこの機能のことを知らないのかなと。*1

 

何気なくしたツイートでしたが、ボス駒崎氏に限らず、意外に知られてないのかも?

 

このNight Shiftという機能、iPhoneに搭載されたのは2016年の3月。リリースされたときは、それなりにネット上で話題になった、と僕は認識していました。

 

でもその認識はたぶん少し間違っていました。話題になっていたのは、僕がいつもネットで見ている人たちの中で、だったのです。

 

僕はiPhoneMacの使いこなし系のブログなんかをよく読みます。Appleの発表会や新しいOSの機能なんかも、そういったブログを見てなんとなくキャッチアップしています(ほんとになんとなくですが)。

 

自然と、TwitterFacebookのタイムラインにはそういった情報が並びます。そうすると無意識に「みんなこれを見ている」と感じてしまう。自分が知っていることは、みんな知っている……そう感じてしまうわけです。

 

しかし実態はどうかというと、「iPhoneは持っているけど、Appleの発表会なんて知らないし、細かい機能もそれほど興味ない」くらいの人が多数派なんですよね。

 

あるコミュニティでは「普通」なことが、別のコミュニティでは「え!そんなものがあったの!」と歓迎される。

そういうことって、意外と身近にありますよね。

 

それって、自分のスキルや知識をどう仕事の中で活かすか、ということともつながっていると思うのです。

 

例えば僕は新卒で金融系のITベンダーに就職しました。いわゆるSEです。お客さんと話して要件定義し、仕様に落とし込んで……みたいなことをやっていました。

それなりにまじめに働いてはいましたが、たぶんSEとしてのスキルは、良く言っても「中の中の上」くらいだったと思います。偏差値で言ったら、52くらい。

 

では、その偏差値52のスキルをもってNPOに転職するとどうなるか?

一言でいうと、めちゃくちゃレバレッジがかかります

 

システム開発という、それまでその組織に足りていなかったスキルによって、ぐっと事業・組織全体のパフォーマンスが上がるわけです。たとえそれが、ITベンダー業界では偏差値52くらいの、たいしたことがないレベルでも。

 

これって、金融取引の裁定取引アービトラージ)みたいだなと思うんです。

裁定取引というのは、ある同じモノが、ある市場と別の市場で価格が異なり、安い市場で買って、高い市場で売れば利益が出る、というもの。*2

 

あるいは古本の「せどり」。古本屋で安く売られている本を買って、Amazonマーケットプレイスやメルカリで高く売る、というような。

 

システム開発というスキルは、ITベンダー業界では、ほぼ全プレイヤーがそのスキルを標準装備しています。言ってみれば、市場における価格が安い(価値が低い)ということです。そのため、付加価値を出すためにはプラスアルファで何かスキルや知識を身に着けなければなりません。

 

しかしそのスキルは、ソーシャルセクターという市場では非常に価値の高いものとなります。ITベンダー業界で価値の低かったものが、別の市場でぐっと価値が高くなる。

その、価値の差を使って、事業に大きなレバレッジをかけ、結果的に社会に生み出す価値をぐんと高めることができるわけです。

 

これ、すごく良いんですよね。

 

もちろん、事業そのものの魅力もあります。前職は金融系の開発をしていましたが、正直なところ、金融業界自体があまり好きになれず、つらいわーと思いながら仕事をしていました。

 

それが、今は「こういう事業が世の中に必要だ!」という信念のもと転職した場所で働いているわけですから、社会にもたらす価値に対するモチベーション、そして仕事に対する充実度が全然違います。



この「裁定取引的なキャリア」は、「システム開発」というスキルにとどまりません。営業、経理、人事、法務など、それなりの専門性が中核となっている職種に共通していることです。

転職先の市場も、ソーシャルセクターに限らず、人材不足の中小企業やスタートアップでも同じだと思います。

 

「自分の仕事ってこのままでいいのかな」って思うことって多いじゃないですか。

 

就職して数年経ち、仕事には慣れたけど、自分にとってずっと同じ仕事を続けることが幸せなのか悩み始めた、とか。

結婚して子どもができて、今までは考えもしなかった「自分が死んだ後の社会」のことを考えるようになった、とか。

今の会社ではそれなりに成果を出して評価もされているけれど、ふと振り返って、その成果が社会にどう還元されたのか考えたら、うまく説明できなかった、とか。



そんな人には、ぜひ、自分が魅力に思える市場で、自分の持っているスキルが高い価値を発揮できないか?裁定取引できないか?ということを考えてみてほしいです。

 

きっとあなたのことを待っている市場があります。

 

ソーシャルセクターへの転職はDRIVE!とかWantedlyなんかで探すとよいと思います。

 

drive.media

 

www.wantedly.com

 

あ、僕が働いているフローレンスも求人いっぱいありますので、こちらもぜひ(笑)

 

florence.or.jp

*1:後日聞いたら「知ってはいるけど、よく忘れちゃうんだよね―」とのことでした。「知らないのかな」とか言ってダシに使ってすみません・・・\(^o^)/

*2:たぶん実際は裁定取引のポイントは「一時的な価格の差を見逃さず利ざやを稼ぐ」みたいなところだと思うので、厳密には違うと思うのですが、細かいところは目をつむっていただきたく・・・