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パパ半育休なう

育休を取りながら一部働く、半育休とはなんぞや?なブログです。

不妊治療のオプションとしての特別養子縁組と、血のつながりにかかわらず大切なこと。『産まなくても、育てられます』

こんにちは。育休的な休みに入ったものの、まだ生まれる気配なく、毎日ブログばかり書いている橋本です。苦笑です。

 

僕の働いているフローレンスというNPOでは、赤ちゃん縁組という事業を行っています。望まない妊娠などで、子どもを生んでも育てられないという女性と、子どもが欲しいけれど授からない夫婦をつなげ、特別養子縁組*1という制度で赤ちゃんを縁組するという取り組みです。

そんな赤ちゃん縁組を担当するメンバーが「とても良い」と言っていた本を読んでみました。『産まなくても、育てられます』という本です。

 

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)

 

 血のつながらない子どもを特別養子縁組で迎え、わが子として育てている夫婦のほとんどが不妊治療の経験者です。つまり、「子どもがほしい」と考えたとき、不妊治療以外にも方法はあるのです。ただ、「養子を迎えたいと思うけれど、不安なことがある……」という人も多いでしょう。本書では、子どもを迎えた夫婦の体験談から特別養子縁組に必要な知識と手続きまで、「親」になるために知っておきたいことのすべてをまとめました。(Amazonの書籍紹介より)

目次は以下のとおり。

序章 つながる不妊治療と特別養子縁組
第1部 養子を迎えるということ ~「気持ちの壁」の乗り越え方
 第1章 私たちが特別養子縁組を決断するまで
 第2章 「親子」への道のり
第2部 特別養子縁組の基礎知識 ~「法的な壁」の乗り越え方
 第3章 特別養子縁組のしくみ
 第4章 特別養子縁組の申し立てから成立まで 

特別養子縁組で子どもを迎えた8組の夫婦のエピソード(多くが不妊治療の経験者)から始まり、「真実告知」「試し行動」など、血のつながっていない子どもと「親子」の関係を作っていくための鍵となるイベントについて説明、最後に特別養子縁組という法制度の概要と、実際に子どもを迎えるプロセスを細かく紹介する……という内容です。

特別養子縁組に関連するこれまでの書籍だと、制度のあらましや背景にある社会問題など「制度より」のものと、養子を迎えた家族、あるいは望まぬ妊娠をした女性の物語を深掘りしていく「エピソードより」に分かれる感じだったのですが、『産まなくても、育てられます』(以下「本書」)は両内容がバランス良く、またエピソードから制度の詳細へという流れのおかげで、より「入りやすい」本になっています。

「出口の見えないトンネルの中にいるようだった」

前述の通り、本書のエピソードに登場する夫婦の多くは、長い不妊治療と、それでもなかなか子どもが授からないという苦しみを経験してきた方々です。その辛さは「出口の見えないトンネル」と表現されています。

子どもができない、できても流産を繰り返してしまうという体験をした女性たちは、しばしば、「あの頃は出口の見えないトンネルの中にいるようだった」という表現をします。

僕の友人にも、不妊治療を経て子どもを授かった夫婦が何組かいます。本書を読んで気になったので、実際に不妊治療で子どもを授かることができるのはどれくらいの割合なのか、調べてみました。

厚生労働省のサイトにあったグラフで、2006-2008年に不妊治療を開始したケースで出産に至った割合を年齢層別にまとめたものが以下です。

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出典:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」報告書(厚生労働省、2013年)

  • 34歳以下だと、治療を9回行えば70%程度のケースで出産に至る
  • 35-39歳だと、治療を10回行えば45%程度のケースで出産に至る
  • 40歳以上だと、治療を10回行えば10%程度のケースで出産に至る

というデータになっています。*2単純にこれが「不妊治療の成功率」と言えるわけではありませんが、比較的近いデータかと思います。年齢や、当然個人差にもよりますが、不妊治療を重ねてもなかなか子どもが授からない人も一定数いるというのは確かでしょう。

不妊治療のオプションとしての特別養子縁組

そういった不妊治療で悩む夫婦に対して、本書では、プラスアルファの選択肢としての特別養子縁組の検討をすすめています。45歳で実際に養子を迎えた夫婦(ミサコさんとトオルさん)のエピソードに添えて、このように述べられています。

ミサコさんが強く言っていたのは、「結果的に自分で産むにせよ、養子を迎えるにせよ、子どもを持つための複数の選択肢を考えておくことが大事」だということです。

自分で産むことにこだわらなければ、子どもを持てる可能性は広がります。子どもがほしいけれど、なかなか授からない、という状況になった時点で、不妊治療以外の選択肢も頭に入れておくのがベスト。そうすれば、不妊治療に行き詰ったときに、すぐに別の選択肢に切り替えることだってできると、ミサコさんは反省も込めて、後輩たちに伝えているそうです。

もともと特別養子縁組という制度は、子どもの福祉のための制度。実の親に育ててもらうことのできない子どもを家庭環境で養育することで、子どもの福祉を守るというのが本来の趣旨です。ですが、晩婚化・晩産化が進む今の日本では、不妊に悩む夫婦を助けるための仕組みとしても、今後より重要になっていくでしょう。 

法改正で特別養子縁組の支援が強化される

特別養子縁組を希望する夫婦の窓口となるのは、行政(児童相談所)や、フローレンスのような縁組を事業として行う団体です。このうち、児童相談所については、これまでは子どもの虐待対応などに追われ、特別養子縁組に取り組むことができないところも少なくありませんでした。

厚生労働省の調査では、2014年度に全国の児童相談所で特別養子縁組を前提に里親委託をした件数は282。平均すると、一つの児童相談所につき1.5件ということになります。もっとも多く養子縁組につなげていたのは大阪市の12件で、全体の4割強にあたる86の児童相談所では0件でした。

しかし、これが今後は改善される可能性があります。具体的には2016年の児童福祉法改正により、児童相談所の業務として、養子縁組に関する相談・支援が明確に位置づけられるようになりました。*3特別養子縁組を前提とした里親委託(養子縁組里親)も制度として整備され、行政の支援が強化される見込みです。

(2)特別養子縁組も育休の対象に

また、育児・介護休業法でもアップデートがありました(育休の話!)。特別養子縁組では、法律上の親子になるまでに、半年間の試験養育期間(正式には「監護期間」)があるのですが、その間は赤ちゃんは夫婦の同居人扱いなので、育児休業の対象ではありませんでした。

それが、ちょうど2017年1月から、特別養子縁組の監護期間や養子縁組里親でも、育児休業が取得できるようになったのです。*4血のつながりだけでない、多様な家族のかたちを支援するという国の姿勢のあらわれですね。

(3)民間団体の養子縁組あっせんに補助が出るように

また、行政ではなく、フローレンスのような民間の団体を介しての縁組についても、法律のサポートがつくようになります。民間団体での縁組は、国からの補助などがないため、縁組にかかる実費(ケースワーカーの人件費や、場合によっては生みの親の医療費など)を、赤ちゃんを迎える夫婦に負担してもらうことがほとんど。費用は、ケースによりますが、数十万から200万くらいまでかかることもあります。団体の事業運営(資金繰り)的にも大変でした。

これが新しい法律によって変わります。2016年に成立した特別養子縁組あっせん法案により、行政からの補助や研修の支援が行われることになりました。*5細かい補助の内容は定まっていないのではっきりとは言えませんが、これによって、団体の事業運営がやりやすくなりますし、子どもを迎える夫婦の負担も減る可能性が高いと思います。

特別養子縁組そのものが、より広まっていけば、今後もこのように法制度などでの支援の幅も広くなっていくでしょう。

血のつながりにかかわらず、大切なこと

我が家は、不妊に悩んだことはありませんが、第一子の誕生前、妊娠3ヶ月ごろに、奥さんの流産を経験しました。妊娠初期のことではありましたが、辛い経験でした。

僕はすでに子どもを生んで育てている夫婦にも、本書をぜひ読んでみてほしいと思っています。養子として迎えた子どもに出生の経緯を伝える「真実告知」についての説明で、本書ではこのように述べています。一番心に残っている部分です。(太字は筆者)

育て親が最初に子どもに伝えるべきことは、出生のディテールではなく、「あなたを産んではいない」けれど、「どれだけあなたを待ち望んでいたか」「わが家に来てくれて、どれだけうれしかったか」ということなのです。

これって、「養子だから」ではなく、すべての親子に言えることではないえしょうか。

お腹を痛めて産んだ子どもでも、養子として迎えた子どもでも、子どもを授かった嬉しさは同じ。「家族として、一緒に幸せに生きていきたい」という気持ちも同じです。

血がつながっているからこそ、愛情は「伝わるもの」として意識しないことも多いのではないかと思います。でも、愛情は「伝えていく」ことが大事ですよね。僕自身も、日々やんちゃをしている娘、これから生まれてくる息子に、「生まれてきてくれてありがとう、大好きだよ」と、ずっと言い続けていきたいと思います。

 

というわけで、子どもを産んで育てている方にも、オススメの本です。ぜひお読みください!

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)

 

実際に特別養子縁組で子どもを迎えた夫婦のエピソードをより詳しく知りたいという方は、こちらの本もおすすめです。著者のうさぎママさんのカジュアルであたたかい語り口が読みやすいです。

産めないから、もらっちゃった!

産めないから、もらっちゃった!

 

 

*1:養子縁組の制度には、育ての親と養子を法律上の実子とする特別養子縁組(子どもの福祉のための制度)と、戸籍にも「養子」として記載しして実親との関係も残る普通養子縁組(家を残すなどの目的)の2つがあります。ここでは前者の特別養子縁組に言及しています

*2:「XX歳で不妊治療を始めた人」といった切り口の変え方によって「不妊治療の成功率」は変わります。以下のような記事もあります。

40代前半の不妊治療成功率は「5割」 | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online

*3:参考:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要

*4:参考:育児・介護休業法について |厚生労働省

*5:参考:特別養子縁組あっせん法案成立!赤ちゃんの虐待死ゼロに向けて重要すぎる一歩 | 駒崎弘樹公式サイト