パパ半育休からの時短なう

育児休業を取りながら働く半育休の話を中心に、育休の制度や子育てについてつらつらと。

育休を取りながら働く「半育休」と時短勤務(短時間勤務)の違い

こんにちは。2歳9ヶ月の娘がやたらとズボンを脱ぎたがる橋本です。寒くないの?

 

先日、「半育休とは何か?」というエントリーを書きました。

ysck-hashimoto.hateblo.jp

公開後、何人かの方から、「時短勤務(短時間勤務制度)とどう違うの?」というコメントをいただきました。

制度としては「半育休=基本休み」と「時短勤務=基本働く」という感じで明確に違いますが、短い時間働くという点では似ているといえば似ています。今回はそのあたりを説明していこうと思います。

 

時短勤務と半育休のざっくり比較表

結論ファーストということで、まずは最初に時短勤務と半育休を簡単に比較してしまいましょう。表にするとこんな感じです。 

  時短勤務 半育休
働く時間 1日の勤務時間を6時間まで短くできる 育休を取りながら、月に80時間まで働ける
働き方

・基本は勤務

・原則として、フルタイム勤務の時間が短くなっただけ
・会社と取り決めした日にち・時間で働く

・基本は休み(育児休業
・80時間の上限の中でどのように働くかは人による
利用可能期間 ・子どもが3歳になるまで利用可能
・ただし会社ごとにより柔軟な制度にもできる
・基本は子どもが1歳になるまで利用可能
・父・母で交代で育休取得する場合は1歳2ヶ月まで
・待機児童になった場合等はプラスで延長もある
利用条件(※) ・同一事業主で1年以上働いている
・1日の所定労働時間が6時間以下でない
・1週間に3日以上勤務している
・同一事業主で1年以上働いている
・子供が1歳になっても(育休期間が終了しても)雇用される予定
・1週間に3日以上勤務している
・期間雇用の場合、子供が1歳半年になるまで契約期間がある
収入 ・法律では特に定めなし
・8時間勤務→6時間勤務の変更であれば、基本給を6/8にすることが多い

育児休業給付金(おおよそ月給の2/3)+働いた分の給与

・ただし給付金と給与を合わせた額が育休前月給の80%を超えないよう給付金が調整される

社会保険料 雇用保険:特に変わらず
・厚生年金:子が3歳になるまでは、フルタイム(8時間)相当の基本給で納めたものとされる(実質一部免除)
雇用保険:働いた場合は、保険料納付必要あり
・厚生年金:保険料は原則免除。ただし働き方によっては免除とならない場合がある

※利用条件について、詳細は厚労省のサイト等を参考にされるのがよいと思います。

 それでは時短勤務、半育休それぞれについて補足します。 

短時間勤務制度(時短勤務)

法律の定めなど

短時間勤務制度について、育児・介護休業法では、3歳までの子どもを育てる労働者について、1日6時間労働の短時間勤務制度を事業者に義務付けています。ただし、働き手の希望によって、会社と調整し、6時間でなく7時間などの長さにすることも可能です。

細かく言うと、1日の所定の労働時間(通常8時間)から2時間引いた時間までをサポートしており、その範囲内であれば6時間でも7時間でも大丈夫、という感じです。

給与額については、法律では「8時間勤務と同じにせよ」とは言っていません(まあ、そりゃそうですよね)。6時間勤務であれば、8時間勤務の場合の給与に6/8をかけたくらいの給与になることが多いでしょう。

ただし、社会保険料(厚生年金)については、時短勤務になる前の給与で計算されるという制度があるため、収入が減っても将来の年金額には影響がない、という仕組みになっています。

(1)次世代育成支援の拡充を目的とし、子どもが3歳までの間、勤務時間短縮等の措置を受けて働き、それに伴って標準報酬月額が低下した場合、子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる仕組みが設けられたものです。
 被保険者の申出に基づき、より高い従前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして年金額を計算します。養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないようにするための措置です。

出典:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置|日本年金機構

 

時短勤務について法律で義務付けられているのは、子どもが3歳になるまでの間だけですが、あくまでこれは「どの会社も最低限これはやらないとダメ」ということなので、企業が独自に、より柔軟な就業規則の規定にすることはできます。

実際に、僕の奥さんの会社だと、子どもが小学校4年生に上がるまで時短勤務でOKという就業規則になっているそうです。

子育てする側としては、3歳になったら即フルタイムでOKになるかというと、必ずしもそんなことはなく、例えば子どもが小学生になるときの、いわゆる「小1の壁」*1を突破するために、時短勤務は大きな助けになるでしょう。

時短勤務の働き方

時短勤務は、フルタイム勤務から働く時間が短くなっただけなので、週に何日働くといったことはフルタイムと変わりません。週5勤務で40時間働いていたのが、30時間になる、という具合です。会社を休むときは普通に休暇を取ることも同じです。

 

半育休(育休を取りながら働く)

法律の定めなど

半育休も、規定されている法律は育児・介護休業法です。通常の育児休業と別に制度があるわけではなく、もともと、育休中に短時間働いてもOK(育児休業給付金が給付される)という仕組みになっています。

育休を取れるのは原則子どもが1歳になるまで。ただし父と母で交互に取れば1歳2ヶ月まで育休期間にできます。*2

その他、子どもが保育園に入れず待機児童になってしまうなどいくつかの条件を満たした場合、さらに延長することもできます。

収入については、育休期間に給付される育児休業給付金(育休前月給の67%)に加え、働いた分の給与が会社から支払われます。ただし、給付金と給与を両方受け取るためには、働く時間は月80時間までと定められています。また、給付金と給与を合わせた月あたりの金額が、育休前の月給の80%を超えると、超えた分について給付金が減額され、トータルで育休前月給の80%になるように調整されます。

社会保険料については、育休中は免除されていますが、半育休になると、雇用保険は免除の対象から外れます。また、厚生年金の保険料も、働き方によっては免除の対象外になる場合があります(詳しくは後述)ので、半育休を検討している場合は人事担当と相談するのがよいでしょう。

半育休の働き方

半育休は、上にも述べたとおり、育児休業なので、会社を休んでいる状態が基本です。その上で、「月80時間まで」という制限の中で、時間を調整して働きます。

考えられる働き方はいろいろありますが、例えば以下のようなパターン。

  1. 能動的に仕事はしないが、トラブル対応やどうしても本人に聞かないとわからないことが出てきた場合にサポートする
  2. 属人的な要素を排除できない仕事(例えば、記事を書く、登壇する、取材を受ける、などでしょうか)を育休中も行う
  3. 人員体制的に業務を他のメンバーに引き継ぐのが難しい場合に、引き継げなかった仕事を無理のない範囲で行う
  4. 業務情報のキャッチアップや、育休からの復帰準備として、1日2時間、あるいは週1日午前だけ、など定期的に勤務する

時間の制約がありますし、事前に職場と業務内容をちゃんとすり合わせする必要もありますが、想像より柔軟に働くことができる制度です。(もっとも、育休中なので家事・育児は大変ですが)

ただし、特に4のようなパターンだと、時間は短くても定常的に勤務しているものとみなされて、社会保険料の免除の対象外になる場合があるそうです。法の定めというよりも、年金機構などが判断することらしく、具体的なガイドラインなどは見つけられなかったので、必要に応じて人事担当や社労士の方に確認するのがよいでしょう。

特に育休からの復帰を目指して超短時間勤務するというのは、働き手にとってもよいと思うのですが、社会保険料の免除がなくなる=収入が減ることを理由に断念するというケースもありえることを考えると、このあたりはもう少し労働者にやさしくしてほしいなと思います。

表でざっくり比較(再掲)

つらつらと説明したところで、改めて比較表を貼っておきます。

  時短勤務 半育休
働く時間 1日の勤務時間を6時間まで短くできる 育休を取りながら、月に80時間まで働ける
働き方

・基本は勤務

・原則として、フルタイム勤務の時間が短くなっただけ
・会社と取り決めした日にち・時間で働く

・基本は休み(育児休業
・80時間の上限の中でどのように働くかは人による
利用可能期間 ・子どもが3歳になるまで利用可能
・ただし会社ごとにより柔軟な制度にもできる
・基本は子どもが1歳になるまで利用可能
・父・母で交代で育休取得する場合は1歳2ヶ月まで
・待機児童になった場合等はプラスで延長もある
利用条件(※) ・同一事業主で1年以上働いている
・1日の所定労働時間が6時間以下でない
・1週間に3日以上勤務している
・同一事業主で1年以上働いている
・子供が1歳になっても(育休期間が終了しても)雇用される予定
・1週間に3日以上勤務している
・期間雇用の場合、子供が1歳半年になるまで契約期間がある
収入 ・法律では特に定めなし
・8時間勤務→6時間勤務の変更であれば、基本給を6/8にすることが多い

育児休業給付金(おおよそ月給の2/3)+働いた分の給与

・ただし給付金と給与を合わせた額が育休前月給の80%を超えないよう給付金が調整される

社会保険料 雇用保険:特に変わらず
・厚生年金:子が3歳になるまでは、フルタイム(8時間)相当の基本給で納めたものとされる(実質一部免除)
雇用保険:働いた場合は、保険料納付必要あり
・厚生年金:保険料は原則免除。ただし働き方によっては免除とならない場合がある

※利用条件について、詳細は厚労省のサイト等を参考にされるのがよいと思います。

ほかにも「こういう観点ではどう違うの?」といった疑問などあれば、コメントやTwitter等でご意見・ご質問いただければと思います。 

 

半育休と時短勤務を連続的なものと考えてみる

半育休と時短勤務はそもそも休みか、働くかという点で土台が異なり、それゆえ各制度の制約なども違います。

ですが、「がっつり働く」から「育児に専念する」までをグラデーション的に考えると、連続した働き方のあり方と捉えることもできます。例えば、

育休が落ち着いてきたら、1日2時間在宅勤務にする

→慣れたら1日4時間(20営業日ならぎりぎり80時間以内)に時間を伸ばし、出社する日も増やす

→時短勤務で本格復帰

のようなこともできるわけです。

こういった場合、先の例のように、定期的な勤務とみなされ、社会保険料は免除にならない可能性がありますが、それでも、育児休業給付金をもらいつつ、育児にも時間をしっかり割きつつ、復帰に向けて少しずつ働くことができるのは、だいぶ助かるのではないでしょうか。

業務内容や勤怠の取り決めなど、職場と調整しなければいけないことも多いですが、企業の側としても、少しずつ業務を回したり、育休からのスムーズな復帰につなげられるというのはきっとありがたいはず

「一億総活躍」や「働き方改革」が叫ばれる昨今。こんな働き方も、広まってもよいのではないでしょうか。

 

参考:育児・介護休業法について |厚生労働省

※本記事は2017/01/11時点の情報を元に執筆しています。制度等のアップデートがある場合もあるのでご注意ください

※公共系のウェブサイト等、信頼できる情報リソースを参考に執筆していますが、万が一誤り等あれば、Twitter等でメッセージいただけますと幸いです。

 

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*1:「小1の壁」についてはこちらをご参考ください:入学後にそびえ立つ「小1の壁」、ワーキングマザーはどう立ち向かう? - リクナビNEXTジャーナル

*2:「パパ・ママ育休プラス」という制度です。こちらのページがわかりやすいと思います:パパ・ママ育休プラスとは?(育児・介護休業法 H21年改正)