パパ半育休からの時短なう

育児休業を取りながら働く半育休の話を中心に、育休の制度や子育てについてつらつらと。

育休中はどれくらい収入が下がるのか?育児休業給付金と手取り月給を比較

 

こんにちは。4月で育休が終わり、5月からぬるっと復帰した橋本です。

1月の半ば(13日)から4月末までの育児休業期間だったのですが、先日ようやく、初めての育児休業給付金が振り込まれました!

2ヶ月分、1月13日〜3月12日の分の給付金の振込が4月21日。少し期間を置いての給付となります。

金額については、あらかじめハローワークのサイトなどを見ていて計算式をなんとなく知ってはいたものの、実際に給付金が入って、改めて自分で確認してみたりしました。

 

そこで今回は、育児休業給付金の金額がどのように算出されるのかと、それが、育休前の手取り給与金額と比べてどれくらいなのかを解説します。

「育休は取りたいけど、どれくらい収入が変わるのかよくわからない……」という方も、おそらくけっこう多いのではないでしょうか。そういった方の不安を取り除く材料になれば幸いです。

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育児休業給付金のざっくり計算式を理解する

まずは育児休業給付金のおおよその計算式を理解しましょう。

 

ざっくり説明すると、育児休業給付金のひと月あたりの金額は、

育休開始から半年 → 直近6ヶ月の給与額面金額の平均を2/3(67%)にしたもの

育休開始から半年以降 → 直近6ヶ月の給与額面金額の平均を1/2(50%)にしたもの

という感じです。育休の期間によって金額が変わります。

 

「6ヶ月の平均」というのは厳密には計算がちょっと違うのですが、それほど重要な点ではないです。脚注にもう少し詳しい式を書いておいたので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。*1

金額計算のポイントは、手取りではなく、額面の金額を基準にして計算するという点です。

具体的に、例を使って説明したほうがわかりやすいので、仮の給与明細をもとに解説してみます。

給付金は給与額面の金額を基準にして計算する

多くの会社では、月給から社会保険料所得税・住民税が天引きされますよね。育児休業給付金が「給与額面金額を基準に計算する」ということは、そういったもろもろの天引き前の金額(=額面金額)を元にして計算するということです。

例として、以下のような給与明細があったとします。
(あくまでサンプルです。社会保険料などは仮でキリのいい金額を入れているので正確ではないです。)

 

表1:サンプル給与明細 

項目

金額

合計

基本給

300,000

340,000

(①額面金額)

残業代

10,000

住宅手当

20,000

通勤手当

(※定期代を按分など)

10,000

健康保険料

15,000

70,000

(③控除金額)

厚生年金保険料

28,000

雇用保険

1,000

所得税

6,000

住民税

20,000

③手取り収入(① - ②)

270,000

 

給与明細の額面上は、基本給に残業代、住宅手当などが加算され、会社から従業員に支払われる金額が決まります。これが額面金額(①)です。

しかし、その全額が従業員の手元にやってくるわけではありません。

健康保険・厚生年金保険といった社会保険料所得税や住民税といった税金が、給与支払いのタイミングで控除(減算)されます。控除後の金額が手取り収入(③)です。

育児休業給付金は、額面金額をもとに計算します。上の例で言うと、③の270,000円ではなく、①の340,000円をもとに計算するということです。

 

例えば、2017年1月から育休に入ったとしましょう。直近6ヶ月の①額面金額と③手取りが、以下の表の通りだったとします。(金額の増減は、残業代で変わっている、という感じ)

 

表2:直近6ヶ月額面・手取りサンプル

額面金額

手取り金額

2016年7月

340,000

270,000

2016年8月

350,000

280,000

2016年9月

335,000

265,000

2016年10月

355,000

285,000

2016年11月

330,000

260,000

2016年12月

345,000

275,000

ここから給付金を計算してみます。

 

育児休業給付金の算出式で、額面金額のひと月あたりの平均を出すと、

342,480円

となります。

 

この金額に、育休が始まってからの期間によって、一定の料率をかけ、実際の給付金金額は以下のようになります。

 

表3:育児休業給付金金額

育児休業給付金金額

育休開始から半年(67%)

232,886

育休開始から半年以降(50%)

171,240

 

給付金をもとにした「手取り収入」はどれくらいか?

さて、ここまでで、育児休業給付金の金額はわかりました。

次に、育休中の収入のイメージをより具体的にするため、この給付金金額がそのまま手取りになるのか?ということを考えてみましょう。

先ほどの給与明細を思い出すと、給与額面金額に対して、税金や社会保険料の天引きがありました。

 

再掲:表1:サンプル給与明細 

項目

金額

合計

基本給

300,000

340,000

(①額面金額)

残業代

10,000

住宅手当

20,000

通勤手当

(※定期代を按分など)

10,000

健康保険料

15,000

70,000

(③控除金額)

厚生年金保険料

28,000

雇用保険

1,000

所得税

6,000

住民税

20,000

③手取り収入(① - ②)

270,000

 
育児休業給付金は①額面金額、つまり天引き前の金額を元にしています。

であれば、そこからまた天引きされるのか?と思うかもしれません。

 

しかし、そうではないのです。ここがもうひとつの重要ポイント。

育休中は、社会保険料は支払いが免除され*2、さらに育児休業給付金は、非課税なのです。ですので保険料はかからず、所得税もかかりません。

住民税については、前年度分の住民税を1年通して支払っているので、育休中も支払いは続きます。ただし、翌年の住民税計算時には、育児休業給付金は所得として計算されません。

計算は世帯単位・年単位なので、単純に翌年度の住民税がゼロになるわけではないですが、だいぶ金額としては減るでしょう。

 

というわけで、先ほど計算した育児休業給付金をもとに、給与明細風に収入を表にしてみるとこうなります。

 

表4:育児休業給付金をもとにした手取り収入

項目

金額

合計

育児休業給付金

232,886

232,886

健康保険料

0

20,000

(控除金額)

厚生年金保険料

0

雇用保険

0

所得税

0

住民税

20,000

手取り収入

212,886

 

育児休業給付金を、育休前の手取り給与額と比べてみる

さて、ここまでくれば、だいぶ「どれくらい収入が変わるのか」がイメージできたのではないでしょうか。

計算した、育休中の手取り収入金額を、手取り給与の平均と比べてみましょう。

先ほどの表をもとにしてみます。

 

再掲:表2:直近6ヶ月サンプル

額面金額

手取り金額

2016年7月

340,000

270,000

2016年8月

350,000

280,000

2016年9月

335,000

265,000

2016年10月

355,000

285,000

2016年11月

330,000

260,000

2016年12月

345,000

275,000

 

この表をもとに、2016年7月〜2016年12月の手取り金額の平均を出すと、

272,500円

となります。

育休前の手取りの平均と、育休中の手取り(給付金 - 住民税)の金額を比べると、こんな感じになります。

 

表5:育児休業給付金と手取り給与額の比較 

 

金額

育休前手取り平均給与に対する割合

育児休業給付金月額(育休開始から半年)

212,886

78.12%

育児休業給付金月額(育休開始から半年以降)

151,240

55.50%

育休前手取り給与平均

272,500

100.00%

 

社会保険料率などは基本給等の金額によって変わるので、「育休前手取り給与平均に対する割合」を一律にこれくらい、とは言えませんが、手取りで考えると給付金の計算式の「67%」「50%」よりは高い金額になるということはわかるかと思います。

 

さいごに:まとめと、育休中の収入が不安な方へ

今回のポイントをまとめるとこんな感じです。

  • 育児休業給付金は、給与の額面金額をもとに算出する
  • 育休中は社会保険料は免除され、育児休業給付金は非課税
  • 手取り収入で育休前と育休中の収入を比べてみることが大事

最初にも書きましたが、この記事の目的としては、「育休取りたいんだけど、収入がどれくらい変わるのかいまいちわからない」という方の不安を取り除くということ。

読んで、育休中の収入のイメージがクリアになったということであれば、うれしいです。

 

なんだかんだいっても、育休に入れば収入は下がります。

でも、具体的にどのようになるのか、あらかじめイメージできていれば、貯金を確認したり、生活費の見直しをしたりと、暮らし方を変えよう、ということを考えたりもできますよね。

育休取得を考えている方は、ぜひ今回の記事を参考に、自分が育休を取得したときの給付金がどのようになるか、計算してみることをおすすめします。

 

 

・・・と、ここまで書いたのは、あくまで育児休業中にいっさい働かなかった場合の話。

育休を取りながら働く、半育休だと、給付金に加えて会社からの給与も入ってくるので、収入は増えます。

もちろんあくまで育休中なので、フルタイム時のようには働けませんが、それでも給付金と給与が両方もらえるのはとてもありがたいです。

現在の制度では、誰でも、どんな仕事でもできることではないのですが、育児と仕事の両立の選択肢のひとつとして非常に有効な方法です。

そんなわけで、次回は、「半育休だと、育児休業中の収入はどうなるのか?」をまとめてみたいと思います。乞うご期待。

 

※そもそも「半育休ってなに?」という方はこちらの記事をどうぞ。

ysck-hashimoto.hateblo.jp

 

※参考:ハローワークインターネットサービス - 雇用継続給付

 

2017/05/22追記

育児休業給付金の料率(67% or 50%)について、「子どもが生まれてから半年」かどうかで決まる、という書き方でしたが、正しくは「育休が始まってから半年以内と、それ以降」でした。記事訂正しました。

 

※このブログの書き手と、なぜこのブログをやっているのか?という想いについてはこちらをぜひご覧ください!

ysck-hashimoto.hateblo.jp

 

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*1:育児休業給付金の金額は、「賃金日額」×休業日数となります。「賃金日額」は、直近6ヶ月の給与額面金額を足し合わせ、180で割った数になります。便宜的に「半年=180日」として計算しているという感じです。一ヶ月未満の育休の場合も、休業日数に応じた給付金が給付されます。今回は「手取りの月給と比較して考える」というのがポイントなので、本文中ではひと月単位で説明しています。より正確に知りたい方はハローワークのページをご覧ください。

*2:ただし育休期間中に就労した場合は、雇用保険料は徴収されます。また育休中に「週1回、月曜は定例会議に出社」のような働き方で、定期的に就労しているとみなされた場合、社会保険料は免除にならない場合もあります

3ヶ月半の育休から復帰して時短勤務になります

こんにちは。赤ちゃんがぐずるとすぐバランスボールで跳ねるのが習慣になった橋本です。

 

さて、2017年1月半ばから始まった育児休業ですが、4月30日をもって3ヶ月半の期間を終了しました。今振り返ると、もうちょっとがんばってこまめに育休レポ書いとけよという感じではあるのですが、まあそこはおいておいて、やっとこさではありますが、ざっくりした「3ヶ月半の育休を取ってどうだったか?」を書いてみようと思います。

(1)奥さんが元気

なんだかんだ言って一番よかったなと思うのは、自分が育休を取ったことで、奥さんが出産後わりと速く元気になったということです。

産後しばらくはとにかく母体回復が大事なので、授乳や赤ちゃんの世話以外の大部分は僕がやり、奥さんにはなるべく休んでもらうことで(そこまでのレベルだったのは最初の1-2週間でしたが)、わりと順調に奥さんの身体が回復したように思います。そもそも二人目でもろもろ慣れていたり、お産も短め、会陰切開もなかったので回復も速い、とかもあるんですけど。

特に思うのは、上の子の産後のときよりも笑顔が多くなって、活動的になっているなあと。3月にマドレボニータの産後ケアプログラム(1ヶ月のやつ)に参加したことも大きいと思うのですが、ママ向けのヨガに行ってみたり、産後ケアについて勉強してみたり、さらにはNECワーキングマザーサロン*1というサロン運営に参加しようとしてみたり、「いま」だけではなく「これから」を見ていろんな活動を(育児をしながら)しています。見ていて「いいじゃんいいじゃん!」という感じ。

そういったことに関して「君が育休を取って家にいてくれたから、気が楽になっていろいろできた」という旨のことを言ってもらったりして*2、とりあえずそれだけでも「育休取ってよかった」と思いました。

家事育児のタスクの分担、みたいなオペレーション的なところは、現時点で純粋に50:50になっているかは微妙ですし、夜間授乳は胸の張りの問題などもあってほとんど奥さんがやっているなど、「もうちょっとがんばったほうがよいのかな?」という気持ちになった時期もあったのですが、元気に活動する奥さんを見ているうちに、そういうオペレーショナルな部分は本質ではなくて、それぞれの家族なりに納得感と心の余裕が得られるようになることが大事なのかなと思うようになりました。

(2)赤ちゃんが大好きになった

乳児の育児はそれなりに大変ですが、それでも、上の子が保育園に行っている間は、多少は心に余裕もできます。奥さんと自分、2人で赤ちゃんを見ていると日々変わっていくその様子にだんだん惹き込まれていきます。

「顔のここのとこは上の子と似てるよね」「こういう表情はそっくり」「かわいいねえ」「うん、かわいい」みたいな会話だったり、なかなかうんちが出ないね、大丈夫かな…という相談だったり、オムツ替えでおしっこをひっかけられたのを2人で笑ったり、そういうプロセスや気持ちを奥さんと共有して育児をしてきて、生まれたときよりずっと、赤ちゃんが好きになったなあと感じます。ラブリー。

(3)上の子(3歳)がより大好きになった

振り返ってみるとこれもけっこう大きい気がします。

育休に限ったことではないですが、子どもが1人から2人になると、奥さんと「こっちは任せろ!そっちは頼んだ!」みたいなシーンも増え、上の子と2人で行動することが増えました。

出産直後は、保育園への送り迎えどちらもやって、帰りは必ず公園に行って1時間くらい遊んで…というのを1ヶ月くらいやっていたので、育休前から関係は良かったですが、ますますばっちり仲良しになれたように思います。

他にも、関西であった友人の結婚式に、泊りがけで上の子と2人で出席し、父娘水入らず(?)で過ごすというプチチャレンジもしましたが、普通に楽しく過ごすことができました。

2人で過ごすことが増えて、上の子との関係により自信が持てるようになったし、これまでに増して大好きになりました。ラブリー。

 

 

というわけで、振り返りとしては、「家族の笑顔が増えて、家族が大好きになって、幸福度が増した」という感じです。

もちろん育児は大変なこともあるし、僕も奥さんも危うくプッツンしそうになったりしちゃったり、肩こりや疲労でげっそりしたりもあり、万事順風満帆というわけではありませんが、育休を取ってよかったのは間違いないです。

 

そして時短勤務へ

そして、5月1日からめでたく職場復帰するわけですが、いろいろ考えた結果、しばらくは時短勤務にすることにしました。

具体的には、9:00〜18:00が定時のところを、9:00〜17:00の1時間時短です。理由としては、夕方〜夜の家庭のオペレーションが、いきなり奥さん1人になるのはつらいだろうというところ。夕食をとり始める18時をめどに帰宅できるよう、1〜2ヶ月は、7時間勤務というかたちにすることにしました。

とはいえ、もちろん7時間勤務なら収入は7/8になるわけで、長期的にはフルタイムに戻そうと思っていますが、いきなりそこにいくのではなく、少しずつ生活を慣らして、グラデーション的に変えていければという感じです。

今後もブログはちょこちょこやっていこうと思っていますので、どうぞよろしくお願いします!

 

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*1:詳細はこちら:NEC ワーキングマザーサロン・プロジェクト。ちなみに「ワーキングマザー」サロンという名前ですが、「母となって働く」について対話するワークショップで、このテーマに感心ある女性なら誰でも参加でき、専業主婦でも独身女性でも学生でも参加OKなのだそうです。

*2:もしかしたら全然違う意図の発言を僕が曲解してる可能性もゼロではないですが、その可能性は検証しない方針です

時短勤務社員がパフォーマンスをフルに発揮できる職場環境とは

こんにちは。年度をまたぎました橋本です。

先日ネットサーフィンしていたらこんな記事を目にしました。

jbpress.ismedia.jp

タイトルの通り「自分は好きで長い時間働いているんだ、残業規制の対象にされたくない!」という人についてどう捉えるべきかという話です。

記事ではこのように述べられています(引用)。

 確かに昨今では、ワーキングマザーや介護をする必要のある人などに対しては、時短で働くことや、残業しなくてすむ働き方を選択できるなど、「事情を抱えた従業員のワークライフバランスに配慮」した各種施策は、大企業を中心に整備され、定着しつつある。そうした従業員だけでなく、「働ける人」や「働きたい人」までも巻き込んで、「長時間労働体質からの脱却」に取り組まねばならない理由があるのだろうか。

 筆者の答えは「イエス」である。すべての企業ですべての人が長時間労働体質からの脱却に取り組むべき最大の理由は、組織におけるインクルージョンを実現するためである、と考えるからだ。

 インクルージョンというのは、「包括」のような意味ですが、この記事の文脈で言うと、社員がお互いの価値を認め合うということ。

残業ありのフルタイムと時短勤務のように、働き方の多様性(ダイバーシティ)が高まっても、働き方の異なる社員たちが、お互いに認め合い、信頼感を得られないと組織は良くならない、というのがこの記事の主旨です。

僕はこの考えに猛烈に共感しました。

例えば、時短勤務で働く社員もいますということをアピールして、子育て世代にも優しいよと謳う会社は多いですが、時短勤務の当事者からすると「早い時間に退社しなければならない」「残業ができない」ということに引け目を感じている人も多いでしょう。
もっと悪い場合にはフルタイムや子育て中でない人から嫌がらせを受けている、なんてこともあるかもしれません。
それって本当に「子育て世代に優しい」のかよ、と。

そういった問題を解決するための手段のひとつが「全社員が長時間労働から脱却すること」なのです。

ちょっと僕自身の経験からお話します。

 

僕が今の会社(フローレンス)に入って驚いたのは、時短勤務で働く社員が多いことでした。子育て環境に問題意識を持って入社してきた、子育て当事者が多いのでそうなるのは自然かもしれません。しかし一番驚いたのは、事業部のマネージャーも、時短勤務*1が多いということ。入社した当時の直属の上司が時短勤務で17時に毎日退社していて、日系のITベンダーから転職したばかりの僕は「マジか、すげえな」と思ったものです。

時短勤務の管理職は何人もいて、彼らを見ていて最初は「みんなすごいなー、相当優秀でスペックが高いんだろうな」くらいに思ってました。しかし、働いているうちに、ポイントはそこではないのかも、と感じ始めました。

というのも、マネージャーに限らず、これだけ時短勤務の社員が多いのに、仕事で「誰に何をやってもらうか」という話をするときに、「あの人は時短だから……」という発言(というか発想)が出てくることが全くないのです。言い換えると、時短で働く社員を特別扱いしていないということです。

 

なぜそういった風土が醸成されているのでしょうか? 僕が考えるその理由は、そもそも全社的に残業時間が少ないということです。フローレンスの残業時間平均はひとりあたり1日15分ほど。僕自身も、育休に入る前は、定時の18時になったら即退社していました。

子どものお迎えがあるなど、時短勤務で働く人は、早く退社しなければならないことに引け目を感じる人も多いと思いますが、その引け目の中身をもう少し噛み砕くと、「フルタイム社員は残業して長く働いているのに、自分は早い時間に帰らなければならない」というのがポイントなのではないでしょうか。

逆に言うと、時短でない社員も残業せず定時に退社することが普通であれば、その引け目はだいぶ薄まるのではないかと思うのです。全員が残業せず退社するという環境であれば、フルタイムと時短勤務の差は単純に業務時間が1〜2時間異なるというだけのことになります。

実際、社内では時短勤務に対するネガティブなイメージはまったくありません。「パートナーが異動になって環境が変わりサポートが必要なので……」など、家庭の事情に応じて一時的にフルタイムから時短勤務に切り替える社員も普通にいます。男性でもいます。そういうのいいですよね。

 

子育て世代の時短勤務に限らず、全員が画一的な働き方、特に「オフィスで長時間働く」という働き方はできないという状況は今後増えていくでしょう。これから親族の介護を担う人も多くなれば、そういった昭和的長時間労働の象徴とも言える40〜50代男性社員も、働き方の問題が他人事ではなくなります。

ひとつの組織で、そういった多様な働き方、特に「長く働くことが難しい」人材を受け入れ、成果を出していくためには、前述の通り、前提として「残業が少ない」風土であることが非常に重要なファクターになるのです。

それでもなお、「自分は長い時間働きたいんだ」という人は、同じ会社・同じ部署で長時間労働するのではなく、副業をしたり、ボランティアをしたり、あるいは勉強会やセミナーに参加するなど、別のかたちで仕事につながることをすればよいと思います。
ひとつの組織・職場においては、原則として全員が長時間労働体質を脱却するということが、真の意味で多様性を活かすために必要なことなのです。

 

以上は僕が今の職場で働いていて感じたことですが、似たようなことは小室淑恵さんの『労働時間革命』や小酒部さやかさんの『マタハラ問題』などにも書かれています。今後はきっとこういう視点がない企業は廃れていくのではないかと思います。

 

労働時間革命   残業削減で業績向上! その仕組みが分かる

労働時間革命 残業削減で業績向上! その仕組みが分かる

 

 

 

マタハラ問題 (ちくま新書)

マタハラ問題 (ちくま新書)

 

 

*1:管理職なので勤務体系は別かもしれませんが、早く帰ったり遅くきたりいわゆる時短勤務的な動きということ

在宅勤務しながらリモートでミーティングに参加するってこんな感じ【半育休なお仕事】

こんにちは。育休期間も後半に入った橋本です。

 

半育休(育休しながら働く)中は、在宅勤務しつつオフィスで開催されるミーティングにリモート参加、ということもときどきあります。

世の中的にもテレワークや在宅勤務が注目されている昨今。自分(たち)がどのようにリモートメンバーを含めた会議を運営しているか、さくっと書いてみたいと思います。

 

リモートで出席しているミーティング

僕はフローレンスのコーポレートサイトや、オウンドメディア「スゴいい保育」の編集に携わっており、編集部のメンバーとのミーティングが多いです。

人数としては、オフィスに6〜7人、それに対してリモートで1〜2人という感じ。

ミーティングの内容としては、サイトのアクセス状況の確認をしたり、今後の施策を話し合うなど。

 

OA環境・ツール

リモート参加時(というか常時ですが)は、パソコンを自宅のネット回線(光)につないでいます。通話品質を考えると、なるべく固定の光回線がよいと思います。

 

他は特別な準備はなく、パソコンにマイク付きイヤホン(iPhoneのイヤホンが便利!)を挿すだけです。

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オフィス側の準備としては、集音マイク利用が望ましいです。遮音性が高い部屋で少人数ならともかく、参加者が多くなると、パソコンのマイクだけでは音声を拾いきれないということも発生します。そのたびにリモート側から聞き返すのは効率が悪いので、音声がちゃんと通じるよう、マイクはそれなりにしっかりしたものがあるとよいでひょう。

 

こんな感じのマイクですね。

 

サンワサプライ フラット型PCマイク MM-MC23

サンワサプライ フラット型PCマイク MM-MC23

 

 

これはだいぶ安いやつですが、オフィスにはもうちょっと高価なものがあった気がします。

 

リモート会議ツールは、Googleのハングアウトやappear.inを使っています。どちらも無料で使えます。

フローレンスは社内インフラとしてGoogle Appsを使っており、全員がGoogleアカウントを持っているので、1対1ならハングアウトが楽です。

 

hangouts.google.com

 

いっぽう複数人だったり、社外メンバーが入るような場合は、共通のURLにアクセスするだけでよいappear.inのほうが使いやすいです。

 

appear.in

 

どちらも通話品質的には特に問題ないと思います。もちろん、Skypeなど他のツールでもよいでしょう。

アジェンダや資料はどうしているのか

フローレンスのミーティングはGoogleドキュメントで作られたアジェンダ(同時編集が可能で、ミーティング中に議事を書き込み、最終的に議事録になる)を見ながら進行します。紙の資料は使いません。

このアジェンダを事前に用意し、関連資料のリンク等を記載しておけば、リモートでも全く問題ありません。

これはリモートの参加者がいるいないにかかわらずとても効率的なので、どんな会社にもおすすめです。(会社のセキュリティの都合でクラウドツールが使えないという人もけっこういますが、だいぶ生産性が違うので、本当にかわいそうだなと思います)

 

リモートでミーティングに参加してみて、どうか?

基本的には、上に述べたようなツールや事前の準備がちゃんと整っていれば、リモートで会議に参加することは特に支障ありません。

 

とはいえ、まったくもってオフィスにいるときと同じというわけではなく、やりやすいときとやりづらいときもあります。

 

やりづらい点(デメリット)

アジェンダに沿って議事進行していくミーティングなら特に問題はないのですが、アイディア出しの会議はやりづらいことがあります。

ブレインストーミングでは、「同時発生的にしゃべる」ことでアイディアを膨らませていくことが多いと思いますが、リモートでは同時にしゃべるとお互い言ったことを認識しづらくなるので、それがやりづらいです。

アイディア出しでよくある、ふせんに何か書いて、ホワイトボードに貼って……というのもできません。

まあ、このあたりは、ツールややり方次第かもしれないですが。

 

意外なメリット

同時発生的にしゃべって話を膨らませるのが難しい、と書きましたが、これは意外にメリットもあり、リモートで参加していると話の脱線が起こりづらい、あるいはオフィス側が脱線し始めたら「あ、話が逸れてる」というのを冷静に感じることができます。

また、リモート側が声を出すとオフィス側は必ずちゃんと聞こうとするので、話が逸れそうだなというときは「そういえばさっきの話ですが……」とひとこと発すると、話がもとの筋に戻ります。

(もちろんリモートの有無にかかわらず、そういう状況はない方が良いのですが)

 

リモートミーティングで良い成果を出すためのポイント

こういった内容をふまえて、リモート参加者がいるミーティングで高い成果を出すためのポイントは、こんな感じだと思います。

 

しっかりツールを準備する

会社の施策として在宅勤務などを推奨し、リモート会議を行うのであれば、ちゃんと設備は用意したほうがよいでしょう。具体的には「使うリモート会議ツールのデフォルトを決める」「オフィス側にちゃんとした集音マイクを準備する」「アジェンダや資料はウェブで共有できるようにする」の3点です。それほど難しいことではないです。

 

アジェンダをちゃんと決めて進行する

議事内容をあらかじめ決めてそのとおりに進めるというのは、リモート参加者の有無に関わらず当たり前のことだと思いますが、リモートメンバーがいるとよりその必要性が高まります。

顔を合わせてしゃべっていれば、アジェンダが適当でもなんとなくミーティングした「気分」になって終わることもあるかもしれませんが、リモート側からするとそれはありえません。

リモートメンバーとしては、わざわざ離れた場所からミーティングに参加するので、ミーティングで話す内容、決めるべきことは何かということにより注意するようになります(しなければなりません)。

逆に、その意識付けを使って、リモート参加者がファシリテーションをする、という役割分担にするのもよいかもしれません。

子どもを見ながら在宅で仕事ができるか?

ちなみに、育休と絡めた話をすると、原則として、育児しながら仕事はしない(上の子は保育園、下の子は奥さんにお願いして仕事の時間を作る)のですが、上の子の保育園お迎えの時間帯に、どうしても出ておきたいミーティングがある場合は、お迎えを奥さんにお願いして、赤ちゃんを抱っこしながらリモートで参加したりします。

 

ただ、赤ちゃんが元気に動いていたり、泣いていたりするとさすがにやりづらいので、寝かせたりミルクを飲ませるなど、支障が出ないよう調整しています。

「保育園に入れないなら家で子どもを見ながら仕事をすればいい」という意見をたまに聞きますが、短時間のミーティングならともかく、ある程度以上の長い時間、育児と仕事を同時に行うのは無理だと思います。

 

さいごに

働き方改革の旗のもと、在宅勤務・テレワークの推進ということで、リモートで働くことが推奨されるようになってきましたが、まだその「ベストなやり方」はまだ決まっていないと思います。

新しいツールや方法論など、積極的に試してみたいですね。

ではでは。

 

ーーー

 

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育休が無理なら、1-2週間の男性産休を取ろう

寒かったり暖かかったり、天気に往復ビンタくらってる気分ですね。橋本です。

男性の育児休業に関して、昨日こんな調査結果がリリースされました。

www.nli-research.co.jp

 

男性の育休取得率が100%という日本生命保険相互会社(以下、日本生命)での、育休を取得した男性へのアンケート調査をまとめたもので、育休を取得したことが、復帰後の働き方にどう影響しているかという観点での調査結果になっています。

「男性の育休取得率100%ってすごいな……!」と衝撃を受けたのですが、よくよく読むと、育休の期間は一週間程度という人がほとんど。有給をあてている人も多いようで、いわゆる育児休業というよりも、男性の産休に近い感じです。それでも、900人近くの男性が子どもの誕生に合わせて一定期間の休暇を取っているというのは素晴らしいこと。

調査結果によると、育休を取ったことにより、家事・育児に対してその後もしっかり関わろうとする意識が高まったり、パートナーの気持ちを受け止めることの大切さを理解したという回答が多くなったり……

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出典:「男性の育児休業」で変わる意識と働き方-100%取得推進の事例企業での調査を通じて | ニッセイ基礎研究所

 

早く帰るために業務効率化を意識するようになったり、同僚の家庭事情などに配慮する気持ちを持てるようになった、という結果が出ています。

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 出典:「男性の育児休業」で変わる意識と働き方-100%取得推進の事例企業での調査を通じて | ニッセイ基礎研究所

今回はこの「男性産休」についてです。

 

1〜2週間の「男性産休」を取得する

男性の育児休業取得率が3%にも満たない現在の状況で、長期間の育児休業を取るというのはハードルが高いという人も多いでしょう。「本当はしっかり育休を取ってみたいのだけど、職場環境的にどうにもならない」ということであれば、1〜2週間程度の「男性産休」を取るというのが、よい「プランB」としての選択肢ではないかと思います。

わりと直近で、政府も国家公務員に対して「男性の産休」を取ることをすすめています。

www.asahi.com

フランスと日本を比較した子育てルポタージュの『フランスはどうやって少子化を克服したか』という本では、フランスの男性が子育てにしっかり参画しているその背景には、2週間の男性産休制度があると述べられています。

こちらではこの「男を父親にする」作業が、とても意識的に行われています。その代表が、出産後に2週間取得できる「男の産休」。短期集中合宿よろしく、パパ・トレーニングを行う期間です。

その制度は、3日間の出産有給休暇と、11日連続の「子どもの受け入れ及び父親休暇」という2つの休暇制度。後者の父親休暇は無給ですが、国の社会保険からからその期間の所得補償があるため収入は減らないという仕組みです。

休暇制度だけでなく、助産師を中心とした出産準備講座に父親も出席するなど、あらかじめ子どもの世話をするための心構えやノウハウを学び、その上でこの産休期間に実際に赤ちゃんの世話をし、「父親になっていく」という大きな仕組みがフランスでは運用されています。

こういった制度を背景として(もちろん、これだけが原因ではないと思いますが)、フランスの出生率は2014年で1.98と、他の先進国に比べて高い水準になっています。

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出典:世界各国の出生率 - 少子化対策 - 内閣府

 

休暇制度をうまく使って男性産休を

実際に、日本で働きながら男性産休をどのように取得するか考えてみると、期間にもよりますが、おそらくそれほど難しいことではないでしょう。

日本では、子どもが生まれた場合、2〜3日の慶弔休暇(あるいは配偶者出産休暇)が取れる就業規則になっている企業が大半です。ミニマムで取るのであれば、この慶弔休暇に有給休暇をプラスして、子どもが生まれてから(厳密には、子どもと妻の退院日からがよいと思いますが)1週間を男性産休とするようにすれば、比較的取得は容易です。有給休暇に余裕があれば、もう1週間休みにして、2週間の産休にすればさらによいでしょう。

有給休暇が余っていない、という方は、数日間でも育児休業を取得するというやり方もあります。育児休業自体は、1日から取得できますし、育児休業給付金は勤めている会社からではなく雇用保険から出るので、有給・無給を気にする必要もありません。給付金はざっくり言って給与の3分の2(時期によっては2分の1)ですが、短期間ならさほど気にならないでしょう。

国にしてほしいこと

国家公務員の男性産休推進という話に目を向けると、実は国家公務員には、産休を取りやすい制度があります。妻が出産する場合は2日間の配偶者出産休暇、さらにそれに加えて5日間の男性の育児参加休暇という制度がちゃんとあるのです*1

安倍総理が「男性の産休を」と言っているくらいですから、ぜひこういった、男性の育児参画のための休暇制度をフランスのように法律化して、日本の男性の家事育児コミット度を高めて欲しいものです。

 

ではでは!

 

フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)

フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)

 

 

ライフ・ワーク・バランスフェスタ東京2017に参加してきたので、過去の認定企業を見てみた。転職するならここ?

こんにちは。赤ちゃんより上の子の寝相の悪さで寝不足気味な橋本です。

 

2017年2月8日に行われた、ライフ・ワーク・バランスフェスタ2017に参加してきました!

www.lwb-festa.metro.tokyo.jp

僕の働いているフローレンスには、働き方革命事業部という部署があります。人事や経理、システムといったバックオフィス業務とともに、制度づくりなどを通して働き方改革を進め、日本一働きがいのある組織を作る、ということをミッションにしている部署です。

けっこういろいろ面白い施策をやっているのですが、それはフローレンスのコーポレートサイトでぜひご覧くださいませ(宣伝すみません)。

働き方改革 | 認定NPO法人フローレンス | 新しいあたりまえを、すべての親子に。

 

この働き方革命、社内に閉じているだけじゃなくて発信していこう!ということで、今回のライフ・ワーク・バランスフェスタにフローレンスも出展。僕も、育休中ですが、面白そうなので仕事として参加してきました。働き方改革が叫ばれている時世というだけあって、今年は特に注目が集まっていたように思います。

フローレンスがどんな出展をしたのか……もお話したい気持ちはありますが、そちらはコーポレートでそのうち記事化されると思うので、今回は、ちょっと違った視点から。

東京都ライフ・ワーク・バランス認定企業

本フェスタでは、東京都がワークライフバランス推進のための施策を行っていると認定した企業(ライフ・ワーク・バランス認定企業)がブースの出展をしていました。

東京ライフ・ワーク・バランス認定企業 | 東京都いきいき職場推進事業 | TOKYOはたらくネット

認定企業は、「長時間労働削減取組部門」「休暇取得促進部門」「仕事と育児の両立推進部門」「仕事と介護の両立推進部門」「多様な勤務形態導入部門」「職場における女性の活躍部門」の6つの部門に分かれます。認定に応募し、「自分たちはこういう取り組みをしていますよ」というのを東京都にPRして、審査員がそれをチェックしてOKであればお墨付きが得られるという感じです。

今回は平成28年の認定企業がブース出展していました。個別の施策は認定企業一覧のページから見ていただくとして、今回は過去5年分の認定企業を振り返り、業種などがどんな感じなのか見てみました。

というわけで過去5年分の認定企業をまとめた表がこちらです。

年度 部門 企業 業種(大分類) 業種(小分類)
株式会社アドバンテッジ リスク マネジメント サービス 労務コンサル
株式会社ランクアップ 製造 化粧品
休暇取得促進 株式会社アオアクア 介護  
仕事と育児の両立推進 株式会社赤ちゃんとママ社 出版  
仕事と介護の両立推進 株式会社白川プロ 制作 番組制作
多様な勤務形態導入
アルス株式会社 IT パッケージ導入
エス・エー・エス株式会社 IT 自社サービス
ChatWork株式会社 IT 自社サービス
職場における女性の活躍促進
株式会社内野製作所 製造 精密機器
有限会社ケア・プランニング 介護  
セントワークス株式会社 介護  
多賀建設株式会社 建設 土木
株式会社トーリツ 介護  
長時間労働削減 住友重機械エンバイロメント株式会社 製造 インフラ系
休暇取得促進 株式会社プレスク IT パッケージ導入
仕事と育児の両立推進
株式会社グリフィン IT 受託開発
東神開発株式会社 不動産  
特定非営利活動法人ワーク・ライフ・バランス ラボ 保育 保育園運営
仕事と介護の両立推進 株式会社アソシエ・インターナショナル 保育 保育園運営
多様な勤務形態導入
クディラアンド・アソシエイト株式会社 サービス 翻訳
株式会社シュフリー サービス 会員特典代行
株式会社日建設計総合研究所 シンクタンク  
有功社シトー貿易株式会社 商社 紙器・段ボール
職場における女性の活躍促進
株式会社浅野製版所 制作 デザイン・広告
港シビル株式会社 建設 土木
長時間労働削減取組
株式会社ウィルド IT 受託開発
一般財団法人建設物価調査会 シンクタンク  
株式会社小林労務 サービス 労務コンサル
休暇取得促進 フコクしんらい生命保険株式会社 生命保険  
仕事と育児の両立推進
株式会社YUIDEA サービス PR
株式会社ジャンボコーポレーション 保育  
医療法人社団瑞心会杉並リハビリテーション病院 医療  
株式会社タニタハウジングウェア 製造 建築資材
仕事と介護の両立推進 有限会社すこやか 介護  
多様な勤務形態導入 株式会社阿部兄弟建築事務所 サービス 建築事務所
女性の活躍促進
株式会社アーク情報システム IT パッケージ導入・受託開発
プレゼンツコンサルティング株式会社 飲食 フランチャイズ
平成25年
長時間労働削減取組
サポート行政書士法人 サービス 行政書士
セントワークス株式会社 介護  
休暇取得促進
一般財団法人日本興亜スマイルキッズ 保育  
株式会社ネットラーニング サービス eラーニング
育児・介護休業制度充実
株式会社アドバンテッジ リスク マネジメント サービス 労務コンサル
株式会社wiwiw サービス 研修
沖電気防災株式会社 製造 防災設備
株式会社プレスク IT パッケージ導入
ミニメイド・サービス株式会社 サービス 家事代行
株式会社ランクアップ 製造 化粧品
多様な勤務形態導入
株式会社トーリツ 介護  
株式会社日本レーザー 商社 レーザー
長時間労働削減取組
学校法人川口学園 教育  
テラテクノロジー株式会社 IT 受託開発
休暇取得促進 アルス株式会社 IT パッケージ導入
育児・介護休業制度充実
サイボウズ株式会社 IT 自社サービス
株式会社テイルウィンドシステム IT 受託開発
医療法人柏堤会奥沢病院 医療  
株式会社マルヨシ 製造 バッグ
多様な勤務形態導入
大友不動産有限会社 不動産  
クラスメソッド株式会社 IT 受託開発
株式会社テレワークマネジメント サービス 業務コンサル

※業種は、僕が勝手にざっと事業内容を見て分類したものなので、間違っているところなどあったら教えてくださいませ……

まとめているうちに、業種別に見てみるとどんな感じなのかなと思ったので、グラフにしてみました。

 

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※円グラフの中の数字は企業数。同企業が複数回認定されているものもカウント。

一番多いのはIT(システム開発や自社サービスを作っている会社)でした。その次に多い分類は「サービス」としていますが、ここは労務コンサルや人材育成(研修)の会社などいろいろです。分類が雑ですみません……そしてその次に製造業、介護、それから保育と続きます。

ITは、転職市場でも求人倍率が高い、企業側から見ると人材難な業種です。DODAのレポートによると、2017年1月の求人倍率は6.12倍。1人の求職者に対して、6件ほどのオファーがある売り手市場*1です。同様に介護は3〜8倍、保育園の保育士さんも3倍弱*2。認定企業に人材難の業界が多いのは、働きやすさを高めていかないと、人を採用できないということのあらわれでしょう。

実際に、ブース出展されていたある認定企業さん(ITの会社)に、「認定企業になったことで採用に影響はありましたか?」と聞いてみたところ、「採用説明会に来る人の数がぐっと増えました」という回答がありました。

複数回認定を受けている企業もある

先ほどの表を見ていただくとわかりますが、複数回、ライフ・ワーク・バランス認定を受けている企業もいくつかあります(部門は変わっているようです)。それだけ働きやすさの向上に力を入れているということだと思うので、ちょっと紹介してみます。転職など考えている方は、こういった観点で企業を見てみるのもよいのではないでしょうか。

・株式会社アドバンテッジ リスク マネジメント

メンタルヘルス分野のコンサルティングをしている会社。長時間労働削減部門で認定されています。昨年からストレスチェックが義務化され、仕事の受注量がぐっと増えつつも、業務効率化で長時間労働を削減してきた点が認定のポイントだったようです。平成25年には育児・介護休業制度充実部門でも認定されています。育児休業や時短などの柔軟な制度が評価されたもよう。

www.armg.jp

 

・株式会社ランクアップ

manara(マナラ)という化粧品を作っている化粧品メーカー。長時間労働削減部門で認定。仕事が早く終われば定時より30分前倒しで帰ってよいという制度が特徴的です。平成25年に育児・介護休業制度充実部門でも認定されていますが、6時間勤務で昼休憩なしなら14時30分に退社できる正社員など、働く時間を柔軟に調整できる制度があるようです。化粧品自体もおそらくママ層向けなのかもしれませんね。

www.manara.jp

・アルス株式会社

人事・給与管理系のバックオフィスシステムを開発している情報システムの会社。多様な勤務形態導入部門で認定されています。1日の勤務時間のうち一部を社外で勤務できる「モバイル勤務」や、在宅勤務などの制度がポイントとのこと。平成24年には休暇取得促進部門でも認定されており、妊娠中の女性向けの「つわり休暇」や、法定より多めの有給休暇制度、休暇を取りやすい雰囲気作りなどが主な施策です。

ARS アルス株式会社

・セントワークス株式会社

介護業界向けのシステム開発や、ワークライフバランスコンサルティングをしている会社。職場における女性の活躍促進部門で認定されています。朝・夜メールやカエル会議など、(株)ワーク・ライフバランス社発の施策を実践しているところがポイントのようです。同様の施策で、平成25年には長時間労働削減部門で認定されています。介護業界向けの仕事をしながらワークライフバランスのコンサルもしているというのは面白いですね。

www.saint-works.com

・株式会社トーリツ

葛飾区や江戸川区などで介護施設訪問介護を行っている会社。職場における女性の活躍促進部門で認定されています。子連れ出勤、保育ルーム、中抜け制度、妊娠中の職種転換など、介護の業界で多い女性従業員の定着支援のための施策を複合的に行っているのがポイント。平成25年には多様な勤務形態導入部門で認定を受けており、シフトを柔軟に組めたり、子育てや介護の状況に応じた勤務形態の調整など、やはり女性従業員が長く働けるような環境づくりが評価されたようです。

www.to-ritsu.co.jp

 

・株式会社プレスク

平成27年に休暇取得促進部門、平成25年に育児・介護休業制度充実部門で認定されているシステム開発の会社。病院向け医療システムや企業年金システムなどが得意分野のようです。1時間単位で有給休暇が取得できる柔軟な制度や、ワークライフバランスの社内研修会などを積極的に行っている点がポイント。コーポレートサイトのトップにも「ワークライフバランス」のメニューがあり、会社としてかなり力を入れていることがわかります。

www.presq.co.jp

 

おそらく、もう少しさかのぼってみれば、他にも複数回認定を受けている企業はあると思いますが、とりあえず過去5年だとこんな感じでした。

「働きやすさ」は人を採用する上で必須の要素になっていく

『マタハラ問題』を取り上げたときも書きましたが、労働人口が減っていくこれからの日本で人材採用をするのであれば、働き方の柔軟性を高めることは必須の要件になってきます。 IT、介護、保育など、すでに採用難になっている業界に働き方改革をPRしている会社が多いのはもっともなことです。

Sansanの調査によれば、オフィスワーカーへのアンケート回答で「働き方改革が必要」と回答したのは83.3%と多数を占めたいっぽう、そのうち何らかの施策を実行できていると回答したのは34.5%。「8割以上が必要性を感じているが、実際に実行できているのは三分の1」という状況になっています。

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出典:クラウド名刺管理のSansan、 オフィスワーカーの「働き方改革に関する意識・実態調査」結果発表 〜働き方改革、成功の鍵は生産性向上〜

今は「柔軟な働き方ができる会社は先進的」という状況ですが、近い将来それが「まともな会社なら柔軟な働き方ができる」というくらいに、社会全体のレベルは上がっていくと思います。逆に言えば、働き方を変えられない企業には人が集まらず廃れていくでしょう。

危機感を持っている方は、今回の認定企業の施策を参考にしてみてはいかがでしょうか。今の会社の労働環境に満足しておらず転職を考えている方は、転職先のご参考に。

 

ちなみに、認定企業に保育園運営会社がいくつかあったので、同じく小規模認可保育所を運営しているフローレンスではどうかというと、保育園の保育スタッフで、残業時間の月平均7時間、定着率89.2%、育児休業取得率100%(男性含む!)などけっこうがんばっています。興味のある方は以下のサイトをご覧くださいませ。宣伝すみません(笑)

recruit.ouchi-hoikuen.jp

僕自身は保育園の運営を担当しているわけではないですが、保育業界のベストプラスティスのひとつとして、今後紹介していきたいなと思っています(フローレンスのサイトで、ですが)。

『マタハラ問題』と働き方改革

こんにちは。育休で料理もするようになり、張り切って作るのはよいのですが、娘(2歳9ヶ月)の食べ残し消費をいつも計算に入れ忘れじわじわ体重と体脂肪率が上昇傾向の橋本です。

育休関連でまた一冊本を読んでみました。「マタハラ」という言葉を世に広め、大きなムーブメントを作るきっかけのひとつになった『マタハラ問題』という本です。 マタハラって、今の少子高齢化社会の課題が凝縮したような社会問題です。

マタハラ問題 (ちくま新書)

マタハラ問題 (ちくま新書)

 

 

働く女性が妊娠・出産・育児を理由に退職を迫られたり、嫌がらせを受けたりする「マタニティハラスメント(マタハラ)」。労働局へのマタハラに関する相談は急増し、いまや働く女性の3人に1人がマタハラを経験していると言われている。本書は「NPO法人マタハラNet」代表による「マタハラ問題」の総括である。マタハラとは何なのか。その実態は、どのようなものなのか。当事者の生の声から問題を掘り下げる。筑摩書房の紹介ページより)

ドン引きするマタハラの数々

読んでまず衝撃を受けるのは、著者の小酒部さんを始めとした、本書で語られるエピソードの数々。

産後の復職について難色を示され、社長からは「家に帰って奥さんと子どもがいないのは、旦那さんが嫌がるだろう。オレだったら嫌だ」「休んで、母親としての仕事をちゃんとしろ」とも言われた。担当業務の引き継ぎを強要され、結局担当していた業務を外された。

労働局雇用均等室に相談もした。そこで受け取ったパンフレットを看護師長に見せて、相談したら、「看護主任は妊娠したから辞めろと言ったわけじゃなく、頭に血が上ったんでしょう。労働局に訴えて、医院側に監査が入ったら、職員全員でこちらの主張を言って、あなたに不利益な証言をして、あなたを困らせてあげます。そんなことになったら、母体にも良くないから、よく考えなさい」と言われた。

夜勤を免除してもらえず、休憩なしの夜勤を続けた後に流産した。病院は「10週に満たない初期流産は遺伝子の問題だから」と良い、Oさんは流産した翌日もまた夜勤をさせられた。Oさんにとっては不妊治療してやっと授かった命だった。

などなど、信じられないようなハラスメント事例が次々と出てきます。電車で読んでいたら怒りのあまりひと駅乗り過ごすレベルです(実話)。女子差別撤廃条約の締結、男女雇用機会均等法の制定から30年以上経った21世紀の社会とは思えません。

何がマタハラの背景にあるのか?

マタハラが起こる背景として、本書では「性別役割分業の意識」と「長時間労働」の2つの要素が挙げられています。

 経済先進国の日本で、未だにマタハラ問題がはびこる理由は大きく二つある。
 一つは性別役割分業の意識。男性が外で働いて、家事・育児は女性が担ってという家庭における夫婦の責務や役割を明確に区別する考え方である。そして、もう一つが長時間労働。マタハラNetのデータ調査でも、「残業が当たり前で8時間以上の勤務が多い」が約38%、「深夜に及ぶ残業が多い働き方」が約6%と、合計約44%と長時間労働が横行している職場でマタハラが起こっていることがわかった。

この考察は、小酒部さんが代表を務めるマタハラNetが2015年に出したマタハラ白書(マタハラの被害にあった女性にアンケートをまとめたもの)の結果からきています。

マタハラの背景1:性別役割分業の意識

白書によれば、マタハラをしてきた相手として最も多いのは「直属の男性上司」が最も多く、被害を受けた女性の半分以上が挙げています。

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(出典:マタハラ白書

そして、マタハラが起きた理由として多く挙げられているのは、「上司・同僚の妊娠や子育てに対する理解のなさ」「上司・同僚の価値観の問題」など。 

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(出典:マタハラ白書

ここで言う「上司・同僚の価値観の問題」の具体的な内容としては、推測になりますが、「子どもができたら女性は仕事をやめて子育てを優先すべきた」という考え方と思われます。本書を読むと、そういった言葉をかけられるマタハラエピソードが数多く載っています。

正直「とっくに21世紀なのにまだこれかよ」と思うのですが、実際にまだ世の中の意識としてそういった性役割分担の考え方は根強いです。内閣府の調査によれば、2016年の「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に対して、40%が「賛成」と考えているという結果が出ています。

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内閣府男女共同参画社会に関する世論調査より筆者作成

マタハラの原因になる価値観も、こういった旧態依然とした社会の雰囲気が職場という環境で結実したものと言えるかもしれません。

マタハラの背景その2:長時間労働の影響

もうひとつの背景として挙げられているのが、長時間労働。マタハラ白書のアンケートでは、「マタハラを受けたときの労働時間はどうだったか?」という質問に対して、長時間労働の傾向である(「残業が当たり前で8時間以上の勤務が多い」「深夜に及ぶ残業が多い」合計)と答えた人の割合が44.1%とのことでした。

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これだけだとちょっとわかりづらいので補足します。そもそも日本で長時間労働をしている人の割合がどれくらいかというと、2012年時点で、週49時間働いている(平均で1日2時間程度残業している)労働者の割合は、全体で22.7%、女性に限ると10.6%となっています。*1

マタハラ被害者のアンケート回答者の具体的な労働時間はわからないので、不正確なところもありますが、それにしても、長時間労働の割合が、日本の女性全体では10.6%、いっぽうマタハラを受けた女性は44.1%というのを見ると、労働時間の長さがマタハラの起こりやすさにつながっている可能性は高いと言えるでしょう。

マタハラは「働き方の違いに対する最初のハラスメント」

本書では、マタハラを「働き方の違いに対する最初のハラスメント」と呼んでいます。重いものが持てないなどできる仕事が変わる、また働く時間も短くなる。言い方を変えれば「残業ができるフルタイムの社員」と異なる働き方であることに対するハラスメントです。この「働き方の違い」は妊婦に限ったことではありません。時短勤務で働く社員が後ろ指をさされる、父親が育児にコミットすることをよしとしない(パタハラ)など、子育て中の親が働きづらい職場も、背景は共通しています。

しかし、働き方の違いは、これから、妊娠・出産・子育てに限った問題ではなくなっていきます。高齢者人口が増え、親の介護が理由で働き方を変えなければならない人が増えてくれば、マタハラをしていた当人が、働き方の違いに対してハラスメントを受けるという可能性もあります。誰もが「残業ができるフルタイムの社員」の地位をキープできるわけでないのです。

だからこそワークライフバランス施策が重要になってきます。本書では、労働人口が減っていく今後を見据えて、働き方改革を企業戦略として掲げるべきだと述べ、実際に社員の柔軟な働き方を実現しているいくつかの企業の例を紹介しています。

なお、小酒部さんが2016年11月に出版した二冊目の著書『ずっと働ける会社』では、社内の働き方改革を実現させ、かつ業績も伸びている11の企業の事例が紹介されています。「うちは零細中小企業だからそんな余裕はない」と思った方は、こういった事例を参考にしてみるのもよいのではないでしょうか。

ずっと働ける会社  マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!

ずっと働ける会社 マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!

 

 

「働くこと」の価値とは

最後に、マタハラ問題解説とは少しずれますが。

本書で登場するマタハラ上司の1人は、妊娠がわかった女性に対してこのように言います。

 妻が働くのは経済的にやっていけない夫婦の場合であって、君の場合はご主人が働いているのだからそうではないだろ。引き際は考えているのか?

男女性別役割の古い価値観がうかがえる発言ですが、もう少し踏み込んで考えると、「働くのは生計を立てるためであり、食べていけるなら働けなくてもよい」という発想が根底にあると言えます。

僕自身、あまりにひどいマタハラエピソードを読んで、「そんなに醜悪な環境なのであれば、仕事を辞めてしまえばよいのではないか」と思うこともありました。*2でもいっぽうで、本書に登場するマタハラ被害者の女性には「今の仕事にやりがいがあり、やり続けたい」と考えていた人も多いのです。単にお金を稼ぐために、給料のために働いているのではなく、働くことは生きることの一部であり、”より良い人生”のためにかけがえのないことであるーーそんな言葉にならない想いを感じた気がします。働くことの対価は、お金だけでなく、その人にとっての生きがいである。そんな視点を持つことが、これからの社会ではきっと重要になっていくでしょう。言葉にすると、あまりにあっさりして簡単なんですけどね。

 

マタハラ問題 (ちくま新書)

マタハラ問題 (ちくま新書)

 

目次
第1章 私のマタハラ体験―子育てサポート“くるみん”認定企業でマタハラに遭う(一度目の流産
あと2〜3年は、妊娠なんて考えなくていいんじゃないの? ほか)
第2章 「マタハラ問題」のすべて―マタハラ4類型から考える(マタハラとは何か
マタハラは感染力の高い伝染病 ほか)
第3章 こんなにある!マタハラの実態―実態調査から見えること(マタハラ白書―実態調査から何がわかるか
マタハラの加害者はだれか ほか)
第4章 私たちになにができるか―働き方のルールが変わる(日本の労働者には武器がない。唯一の武器は?
ハラスメント大国、日本! ほか)
第5章 マタハラ解決が日本を救う(契約社員だった私が「世界の勇気ある女性賞」を受賞する
マタハラNetの活動について ほか)

*1:出典:平成27年版厚生労働白書 - 人口減少社会を考える - |厚生労働省

*2:人材の流動性が高まり、転職しやすい社会になれば、人員流出でだんだんとブラック企業は淘汰されていくでしょう。マクロの視点では、それが望ましい姿だと思います。保育園に入園できず転職できないという問題はまた別にありますが……