パパ半育休からの時短なう

育児休業を取りながら働く半育休の話を中心に、育休の制度や子育てについてつらつらと。

時短勤務社員がパフォーマンスをフルに発揮できる職場環境とは

こんにちは。年度をまたぎました橋本です。

先日ネットサーフィンしていたらこんな記事を目にしました。

jbpress.ismedia.jp

タイトルの通り「自分は好きで長い時間働いているんだ、残業規制の対象にされたくない!」という人についてどう捉えるべきかという話です。

記事ではこのように述べられています(引用)。

 確かに昨今では、ワーキングマザーや介護をする必要のある人などに対しては、時短で働くことや、残業しなくてすむ働き方を選択できるなど、「事情を抱えた従業員のワークライフバランスに配慮」した各種施策は、大企業を中心に整備され、定着しつつある。そうした従業員だけでなく、「働ける人」や「働きたい人」までも巻き込んで、「長時間労働体質からの脱却」に取り組まねばならない理由があるのだろうか。

 筆者の答えは「イエス」である。すべての企業ですべての人が長時間労働体質からの脱却に取り組むべき最大の理由は、組織におけるインクルージョンを実現するためである、と考えるからだ。

 インクルージョンというのは、「包括」のような意味ですが、この記事の文脈で言うと、社員がお互いの価値を認め合うということ。

残業ありのフルタイムと時短勤務のように、働き方の多様性(ダイバーシティ)が高まっても、働き方の異なる社員たちが、お互いに認め合い、信頼感を得られないと組織は良くならない、というのがこの記事の主旨です。

僕はこの考えに猛烈に共感しました。

例えば、時短勤務で働く社員もいますということをアピールして、子育て世代にも優しいよと謳う会社は多いですが、時短勤務の当事者からすると「早い時間に退社しなければならない」「残業ができない」ということに引け目を感じている人も多いでしょう。
もっと悪い場合にはフルタイムや子育て中でない人から嫌がらせを受けている、なんてこともあるかもしれません。
それって本当に「子育て世代に優しい」のかよ、と。

そういった問題を解決するための手段のひとつが「全社員が長時間労働から脱却すること」なのです。

ちょっと僕自身の経験からお話します。

 

僕が今の会社(フローレンス)に入って驚いたのは、時短勤務で働く社員が多いことでした。子育て環境に問題意識を持って入社してきた、子育て当事者が多いのでそうなるのは自然かもしれません。しかし一番驚いたのは、事業部のマネージャーも、時短勤務*1が多いということ。入社した当時の直属の上司が時短勤務で17時に毎日退社していて、日系のITベンダーから転職したばかりの僕は「マジか、すげえな」と思ったものです。

時短勤務の管理職は何人もいて、彼らを見ていて最初は「みんなすごいなー、相当優秀でスペックが高いんだろうな」くらいに思ってました。しかし、働いているうちに、ポイントはそこではないのかも、と感じ始めました。

というのも、マネージャーに限らず、これだけ時短勤務の社員が多いのに、仕事で「誰に何をやってもらうか」という話をするときに、「あの人は時短だから……」という発言(というか発想)が出てくることが全くないのです。言い換えると、時短で働く社員を特別扱いしていないということです。

 

なぜそういった風土が醸成されているのでしょうか? 僕が考えるその理由は、そもそも全社的に残業時間が少ないということです。フローレンスの残業時間平均はひとりあたり1日15分ほど。僕自身も、育休に入る前は、定時の18時になったら即退社していました。

子どものお迎えがあるなど、時短勤務で働く人は、早く退社しなければならないことに引け目を感じる人も多いと思いますが、その引け目の中身をもう少し噛み砕くと、「フルタイム社員は残業して長く働いているのに、自分は早い時間に帰らなければならない」というのがポイントなのではないでしょうか。

逆に言うと、時短でない社員も残業せず定時に退社することが普通であれば、その引け目はだいぶ薄まるのではないかと思うのです。全員が残業せず退社するという環境であれば、フルタイムと時短勤務の差は単純に業務時間が1〜2時間異なるというだけのことになります。

実際、社内では時短勤務に対するネガティブなイメージはまったくありません。「パートナーが異動になって環境が変わりサポートが必要なので……」など、家庭の事情に応じて一時的にフルタイムから時短勤務に切り替える社員も普通にいます。男性でもいます。そういうのいいですよね。

 

子育て世代の時短勤務に限らず、全員が画一的な働き方、特に「オフィスで長時間働く」という働き方はできないという状況は今後増えていくでしょう。これから親族の介護を担う人も多くなれば、そういった昭和的長時間労働の象徴とも言える40〜50代男性社員も、働き方の問題が他人事ではなくなります。

ひとつの組織で、そういった多様な働き方、特に「長く働くことが難しい」人材を受け入れ、成果を出していくためには、前述の通り、前提として「残業が少ない」風土であることが非常に重要なファクターになるのです。

それでもなお、「自分は長い時間働きたいんだ」という人は、同じ会社・同じ部署で長時間労働するのではなく、副業をしたり、ボランティアをしたり、あるいは勉強会やセミナーに参加するなど、別のかたちで仕事につながることをすればよいと思います。
ひとつの組織・職場においては、原則として全員が長時間労働体質を脱却するということが、真の意味で多様性を活かすために必要なことなのです。

 

以上は僕が今の職場で働いていて感じたことですが、似たようなことは小室淑恵さんの『労働時間革命』や小酒部さやかさんの『マタハラ問題』などにも書かれています。今後はきっとこういう視点がない企業は廃れていくのではないかと思います。

 

労働時間革命   残業削減で業績向上! その仕組みが分かる

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マタハラ問題 (ちくま新書)

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*1:管理職なので勤務体系は別かもしれませんが、早く帰ったり遅くきたりいわゆる時短勤務的な動きということ